メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 調査および分析シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 1298 Feb/4/2017

イラン政府関係者発言:核協議及びJCPOA交渉時オバマ政権は射程僅か2000キロのミサイル開発なら暗黙の了
解をイランに与えた―ヨーロッパに届かぬがイスラエルには到達

A・サヴィヨン、Y・カルモン、U・カファシ*

2017年1月30日、アメリカの消息筋が、イランは新型弾道ミサイル「ホラムシャハル」の試射に失敗した、と述べた。複数の情報によると、ミサイルは965km飛んで爆発した※1。イランのザリフ外相(1月31日)とデフガン国防相(2月1日)は、口を揃えたように「イランが自国の防衛企画の件で誰かの許可を求めることはない」と強調した※1。

イランの政府スポークスマンは、「イランのミサイル開発計画は厳密に防衛的な性格である」と言っているが、射程2,000qのミサイルは攻撃的且つ戦略的範疇に入ることを、指摘しておく必要がある。イランがこの開発の中止をいつも要求されているのは、ここに理由がある。

米・イラン核協議に先立つ時代、イランは、射程2,500−5,000kmの弾道ミサイルを開発していた。ヨーロッパいやアメリカにも脅威を及ぼす性能である。

イラン・イスラム革命防衛隊(IRGC)の理論家でIRGC広域(ボーダーレス)安全保障理論分析センター長であるアッバシ博士(Hassan Abbasi)は、2004年に次のように言っている。

「我々は、アングロサクソン文明の破壊とアメリカ人イギリス人の根絶を目的とする戦略計画を立案済みである。

我方の手持ちミサイルはこの文明に打撃を与える性能がある。最高指導者(アリ・ハメネイ)の命令一下我々は彼等の都市及び施設の破壊を目標として、直ちにミサイルを発射する…ハメネイ師の政策と文明対話の故に、我々は計画を凍結した…そして今、我々は(再び)我々の計画整備を推進する時になった…。グローバルな異教徒正面は即ち反アッラー・反ムスリム正面である。我々は、この正面を撃つため、自爆攻撃とミサイル攻撃を含め、あらゆる手持手段を投入しなければならない」※3。

ロンドン発行サウジ紙Al-Sharq Al-Awsatも、2004年6月14日付紙面で、シハブ4型及びシハブ5型長射程ミサイル計画が、イランのハメネイ最高指導者の命令で再開された、と報じた※4。

ジュネーブ合意のすぐ後、革命防衛隊系のMehr通信が、2013年12月14日付でイランのミサイル整備計画を伝えた。各種シハブ型が詳しく紹介されているが、それによると、射程2,200−3,000qのシハブ3D型は「容易に被占領地(イスラエル)に到達し、その全域を射程圏内に入れる」のである。この記事は、シハブ4型が射程3,000qで軌道にのる性能を有するとし、シハブ5型については極く僅かの情報しか発表されていない、と報じている。シハブ6型の性能諸元もこの記事にのっている※5。

アメリカが認めた射程2,000qのミサイル開発―イスラエルは射程圏内

しかしながら、アメリカ・イラン交渉が始まった後、そして2013年11月にジュネーブで第1段階が終った時点で、イランの政府関係者達がイランのミサイル整備計画について射程2,000q以上のミサイル開発は不可と報じ始めた。

例えば2013年12月10日、ジュネーブで暫定合意が成立した後、すぐに革命防衛隊司令官ジャファリ(Mohammad Ali Jafari)が、イランは射程2,000q以上のミサイル生産ができるが、ハメネイが2,000qまでの射程に制限するよう革命防衛隊に指示したとし、「我々は革命防衛隊ミサイルの射程をもっとのばしたいが、最高指導者は2,000qまでに制限した。我々はミサイルの射程をのばせる。我々のミサイルはイスラエルに到達すべきである…P5+1(グループ)との核協議中及びジュネーブ合意時、政府はこの制限線を越えなかった」と述べた※6。

革命防衛隊指揮官達は、政府にとって最も重要なのは、イスラエルを攻撃できるミサイルの保有であると指摘している。例えば、革命防衛隊航空宇宙・ミサイル機構のハジザデー機構長(Amir Ali Hajizadeh)は、2016年のミサイル試射時に「我々にとってイスラエルが悪の存在であることは明白であり、我方のミサイルの射程2,000qは、遠方のシオニストを

撃つことは意図したものである」と言った※7。

ミサイルでイスラエルを狙うとするイラン政府の明確な意図については、その発言が多数MEMRI Inquiryand Analysis No.1135 (2014年12月4日付)及びSpecial Dispatch No.6349(2016年3月6日付)に引用されている。

前者は「イラン革命防衛隊ミサイル隊指揮官我々は射程2,000qのミサイルを開発し、ヒズボラには射程300qのミサイルを供給した2014年12月3日付Fars通信天然ガス田に関するイスラエルの幻想は地中海に消える=vという内容。

後者は「イランイスラエルを地表から抹殺≠フスローガンで長射程ミサイルを試射」と題する。

写真1


“イスラエルを地表から抹殺”と大書したイランのミサイル(Fars, Iran, March 9, 2016)

2014年11月17日、革命防衛隊系のTasnim通信が次の内容の記事を配信した。

「イランは、2,000qまでの射程を有する長距離ミサイルの確保によってイランが妥当と考える射程に到着した。当面≠サの射程を伸ばす必要はない。アメリカはイランから1万1,000qの距離にはあるが、最近イランの国境近くまで接近してきた。その軍基地、資材及び部隊は、イランのミサイルのターゲットになり得る。

同じようにシオニストは、この地域においてイラン最大の敵であり、距離からみれば1,200q足らずの所に位置している。従って、イランに近い所にある米軍基地を叩くには、短射程及び中射程ミサイルで充分であり、被占領地(イスラエル)の攻撃には、手持ちの長射程ミサイルで足りる。図表は米軍基地数か所と待機状態にあっていつでも発射可能なミサイルを示す」※8。

更に2015年8月18日、デフガン国防相は、射程2,000q以上のミサイル生産について記者から質問され、「我々は2,000qを越える射程のミサイルは生産しない」と述べた※9。

アメリカは、イスラエルに到着する射程2,000q迄のミサイル開発を認めた―JCPOA秘密付則―それとも黙認?

革命防衛隊幹部達は、声明のなかで、イラン製ミサイルの射程制限は、イスラエルには届くがヨーロッパには到達しないことを前提にする旨示唆している。例えば革命防衛隊司令官ジャファリは、国連安保理決議2231に対する革命防衛隊の同意(2015年11月2日)に関連して、「この決議のポイントのひとつが、制限問題である。これについては、軍部のなかに危惧する向きがあった。そこで我々は、(イランの)最高安全保障会議で何度か協議し、最高指導者(ハメネイ)の許へも行った。(イラン側)交渉団は西側にイランがこの制限に同意することはないと言った。彼等(西側)は、この問題が決議の中に含まれなければならないと主張した。私が最高指導者に会った時、最高指導者は、防衛能力の開発には制限がないと言った。制限といえば、核ミサイルに関するものだけで、これは、我々は望まなかった」と述べている※10。

翌日、即ち2015年11月3日、イラン軍参謀総長フィロウザバディ(Hassan Firouzabadi)が、ジャファリの発言に関連して、「イランのミサイル開発活動に制限なしとする革命防衛隊司令官の発言は正しい。我々は二つの制限事項に従う。第一は、核計画に関するもので、JCPOAに指摘してある。第二が2,000qの射程問題で、これはイランでさまざまな人が既に指摘している」と語った※11。

ここで指摘しておくべきであるが、IRIBが2015年11月4日にだしたこのニュースのヘブライ語版は、見出しと内容共に、JCPOAがイランに射程2,000qの弾道ミサイルの保有を認める、とはっきり指摘している。ヘブライ語ニュースは、次のように報じた。

フィロウザバディ:核合意はイランに射程2,000qのミサイル(保有)を約束

イラン軍参謀総長フィロウザバディ少将は、「国が革命防衛隊総司令官(ハメネイ)の命令のもとで、特に核計画の制限は守るが、射程2,000qのミサイル生産の権利はある」と強調した。

フィロウザバディ少将は、昨日イスラム指導者と政府関係者を前にしてこのように発言し、革命防衛隊総司令官が強調した点に言及した。即ち、西側との核合意には、核計画の制限を含むが、イランはこれに拘束されるが、イランは射程2,000qのミサイル保有の権利ありとした点である※12。

以上の諸声明は、イスラエルを攻撃するミサイルの開発をイランに許すことが、JCPOAの秘密付則の範疇にないものの、核取引の不可分の一部とする暗黙の了解のなかに入ることを示している。この了解事項を書式の形で残さないのは、双方にとって都合がよいからである。まずイランに関しては、ミサイルは防御的なものと定義しながら、実際には攻勢用であるので、ミサイル計画に公けに言及するのを拒否する。一方オバマ政権は、イスラエルを攻撃できる能力のミサイル開発を認めたことが判ると、波紋を呼ぶからであった。

一方、国連安保理決議2231(2015)を、その前の安保理決議1929(2010)と比較すれば、イランに対するオバマ政権の追加的譲歩が反映されているのが判る。その譲歩は二つある。

第1、 安保理決議1929は、核弾頭搭載可能なミサイルに関し、その活動をイランに禁じている。一方、安保理決議2231は、可能な≠意図した≠ニいう表現に変えた。前者は客観的な仕様を意味し、後者は流動性のある政治的表現である。

第2、 安保理決議1929は、如何なるミサイル活動もイランに禁じたが、2231はこの禁止を撤回した。

2016年5月9日にイランがミサイルの試射をした。これはJCPOAの履行日後に実施され、オバマ政権を困惑させた。この試射に続いて、革命防衛隊航空宇宙・ミサイル機構のハジザデー機構長は、「アメリカ人達は(我々に)、ミサイルの件について話をするな。試射や訓練をやっても口外するな≠ニ言っている」と述べた※13。

*A・サヴィヨンはMEMRIのイランメディア・プロジェクト長、Y・カルモンはMEMRI会長、U・カファシはMEMRIの研究員。

[1] Foxnews.com, January 30, 2017.

[2] Yjc.ir, January 31, 2017; Tasnim (Iran), February 1, 2017.

[3] Shargh (Iran), June 5, 2004; Al-Sharq Al-Awsat (London), May 28, 2004.次も参照:MEMRI Inquiry & Analysis No. 181, イラン内部で論争:核開発計画に関する西側の圧力にどう対応するか, June 17, 2004; MEMRI Special Dispatch No. 723, イランの革命防衛隊幹部自爆攻撃の威嚇:我が方のミサイルはアングロサクソン文化を撃つ用意あり…欧米には重大施設が29ヶ所ある…, May 28, 2004; and MEMRI TV Clip No. 252, イラン革命防衛隊幹部テヘラン大学で講演(第U):我々はアメリカの核をアメリカの地で撃つ計画を立てている…May 22, 2004.

[4] イラン国防省の軍事筋は次のように述べた。「先週、革命防衛隊指揮官会同で、ハメネイはイスラエルがイランの核施設と軍基地の攻撃を計画中である。防衛並びに戦闘準備を大車輪で実施しなければならない≠ニ言った。ハメネイは、石油価格の上昇で、イランは軍事プロジェクトにこれまでより大きい予算を組むことができると強調した。(イランの)国防省は、シャハブ4及びシャハブ5の開発再開に10億ドルを受けとった。過去にイランが、射程1,200qのシャハブ3(イスラエルに到着できる)の試射をしたことは、知られている。ハタミ(大統領)は、射程2,800q(西ヨーロッパをカバーする)のシャハブ4、及び射程4,900−5,300q(アメリカに到達できる)の開発プロジェクトを停止した。イランの戦略的関心と防衛ニーズに合致しないプロジェクトと、考えたからである」。Al-Sharq Al-Awsat(London), June 14, 2004.

[5] Mehrnews.com, December 14, 2013.

[6] ISNA (Iran), December 10, 2013.

[7] Fars (Iran), March 9, 2016. 次を参照:MEMRI Special Dispatch No. 6349, イラン長射程ミサイルを試射。胴体には「イスラエルを地表から抹殺」のスローガンを大書, March 16, 2016.

[8] Tasnim (Iran), April 17, 2014. 次を参照:MEMRI Inquiry & Analysis No. 1135, イラン革命防衛隊ミサイル隊指揮官:我々は射程2000kmのミサイルを開発、ヒズボラには射程300kmのミサイルを供給。Fars通信:天然ガス田に関するイスラエルの幻想は地中海に消える, December 3, 2014.

[9] Yjc.ir, August 18, 2015.

[10] Fars (Iran), November 2, 2015.

[11] Mashregh (Iran), November 3, 2015.

[12] Hebrew.irib.ir, November 4, 2015.

[13] 次を参照:MEMRI Special Dispatch No. 6430 革命防衛隊航空宇宙・ミサイル部隊司令官:アメリカ人はミサイルの件について話をするな。試射しても口外するなと我々に口止め, May 15, 2016.


 

 

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