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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 1313 May/13/2017

1967年境界のパレスチナ国はハマス・PLO間合意のひとつの共通方式
―パレスチナは川から海まで、武力闘争も継続―

C・ジェイコブ*

2017年5月1日、ハマスが、運動指導者全員の承認した政策文書を発表した。指導者達は、この文書がハマス憲章にとって代わるものではなく※1、運動の立場を現時点に合わせたものと明言している。この文書は、ハマスのスポークスマンによって、ハマスの原理原則を譲らぬひとつの展開、として提示された※2。

ハマスの指導者マシァル(Khaled Mash`al)は、文書発表時に、次のように言った。  第1、4年前ハマスが、現実に実行中の政策に合わせた政治計画をたてることを決めた。第2、この政治計画は運動の権限の源である。第3、その2年後、この政治計画の詳細について、深く突っ込んだ検討が始まった。第4、国際法の専門家と協議した後、ハマス指導者全員の名において文書にまとめられた。第5、この文書でハマスは、現在抵抗と戦闘の分野で実行中であるが、政治的機能における展開≠ニ刷新≠提示した。勿論運動の要求とパレスチナ人民の権利に譲歩することはない※3。

この政策文書は、世界におけるイメージをよくして、ファタハとPLOと政治的立場を共有するかのように振舞い、つまるところプラグマチックで民主的且つ過激ではないような印象をつくりだすのが狙いである。しかしながら、それは、解決不能の内部矛盾にみちている。そのひとつが、1967年境界の国家は、ハマス、ファタハそしてPLOの民族合意のひとつの共通方式≠ニしながら、同じ文書のなかでハマスはパレスチナを一部でも放棄する意志がないとし、難民の郷土帰還権を要求し、イスラエルの承認はないと主張する。更にこの文書は、ハマスが武力闘争とジハードを継続するとも述べているのである※4。

写真1

何か変った点はあるか

ハマス・ムスリム同胞団の関係が指摘されていない。この新しい政策文書は、西側とアラブ諸国の耳に心地よく響くことが狙いで、ハマスとムスリム同胞団(MB)の関係に全然触れていない。文書はハマスを民族的イスラム運動と規定し、同胞団のパレスチナ支部とは全然言わない。マシァルは、文書発表時の記者会見で、ハマスは同胞団の教派に属するが、独立したパレスチナの組織で、ほかの組織には従属していない、と言った※5。文書は運動のイスラミスト的側面を強調しない。例えば、憲章には明記しているのに、パレスチナの地は、ワクフ(イスラムの基本財産)の地として指摘することがない※6。

ハマスの強調点

戦闘対象は占領とシオニズム―ユダヤ人ではない

政治文書は、憲章にしみこんでいる反ユダヤ主義から距離をおこうとする。そこで、ハマスはユダヤ人だからといってユダヤ人を攻撃しているのではなく、占領とシオニストの事業に反対して戦っているのだ、と強調する。この政策文書は、「ハマスは、民族、宗教或いは人種を理由に、人間を迫害し或いはその権利を傷つけることに反対する。反ユダヤ主義とユダヤ人迫害は、ヨーロッパ史にかかわる現象であり、アラブとムスリムの歴史には関係がない。シオニスト運動は、既に世界で終っている入植占領の危険例であり、パレスチナでも終らせなければならない」と主張する※7。

イスラエルとの交渉―今は無い

ハマスは憲章で、イスラエルとの交渉を全面的に否定している。それと対照的なのがマシァルの説明で、時によりハマス・イスラエル交渉の場は ないとし、「交渉はひとつの道具であり、我々はそれを(我々が)変え得るものとして扱っている。ハマスの(現在の)政策は、タイミングが許さないので対イスラエル交渉に反対する。今日イスラエルは、交渉をひとつのだましの手として使っている」と述べ※8、「しかし、原則からいえばそのような交渉を阻止するものは何もない。預言者(ムハンマド)とサラーフ・アッディーン(サラジン)は敵と話をした」とつけ加えた※9。

変っていない点は何か

1.パレスチナ解放を目的とする武力闘争とジハード

政策文書は「パレスチナ解放の抵抗とジハードは、我々人民と我々ムスリム全員にとって、合法的権利、任務そして名誉である…占領に対するあらゆる方法、手段による抵抗は、聖なる法と国際法によって認められた合法的権利である…そしてその最たるものが武力闘争であり、これは、原則を守りパレスチナ人民の権利を回復するための戦略的選択である…ハマスは、抵抗とその武器を傷つけることに反対し、人民の抵抗手段の発展権を強調する」としている※10。

2.難民の帰還を実現

「1948年或いは1967年に占領された地域―即ちパレスチナ―について、そこから引き離され戻ることを禁じられているパレスチナ難民、土地から引き裂かれた人々の帰還権は、個人及び集団の当然の権利である…ハマスは難民問題の抹消計画或いはその試み―パレスチナ以外の地或いはほかの地での再定着を含む―に反対する。ハマスは、土地から追い出され占領された結果、難民となり土地を失った人々に対し、帰還権と共に補償の必要性を強調する。そしてこの補償は帰還権が履行された後に、実行されなければならない。帰還権を放棄することはなく、それを傷つけてもならない」※11。

3.イスラエルを承認しない―イスラエルの存在は当初から無効

ハマスの政策文書は、「1967年の境界内にパレスチナ国家につくることは、それは運動がシオニスト存在体を承認することを意味しない…イスラエルの存在は、当初から無効であり、その存在はパレスチナ人民の権利に反する…シオニスト存在体の合法性は認められない」と強調する※12。

4.川から海までパレスチナ

ハマスの政策文書は「パレスチナについては、如何なる条件、状況であっても、そして又如何なる圧力があっても、そして占領がいつ迄続こうとも、絶対に妥協することはない。ハマスは、川から海までのパレスチナの完全解放とは異なる代案は一切拒否する…東はヨルダンから西は地中海、北はラスナクラ(ロシュハニクラ)から南はウンムラシラシ(エイラート)に至る領域のパレスチナは、ひとつにまとまった領土単位であり、パレスチナ人民の郷土である。パレスチナ人民をそこから追い出しその地から離散させ、その跡地にシオニスト存在体をつくっても、この全域に対するパレスチナ人民の権利を放棄することにはならない…」と主張している※13。

パレスチナ国家の定義

メディアが一番注目し、ハマスのプラグマチズムの発展としてとりあげたのが、1967年の線を境界とするパレスチナ国家に触れた個所である。表現があいまいなので、ハマスが1967年境界のパレスチナ国家の建設を受入れるのかどうか、明確に理解することができない。文書は、ハマス、ファタハそしてPLOによる民族合意のひとつの共通方式とみなす≠ニしか言っていない。

前述のように、この政策文書は「パレスチナについては、如何なる条件、状況であっても、そして又如何なる圧力があっても、そして占領がいつ迄続こうとも、ハマスは川から海までのパレスチナの完全解放とは異なる代案は一切拒否する」と述べ、「同時に―そしてこれは、シオニスト存在体の承認を意味せず、パレスチナ人民の権利について妥協するものではない―ハマスは、1967年6月4日の線でエルサレムを首都とする独立主権国家パレスチナの建設と、難民そして土地を追われた個々人の郷土帰還を、民族合意のひとつの共通方式とみなす」と表明した※14。

更に指摘しておくべき点がある。即ち、1967年境界の国家建設を民族合意のひとつの共通方式≠ニ書いたのは、新しいハマスの立場ではない。これまでマシァルが何度も言っており、ハマスの指導者故アフマド・ヤシンも同じことを話した。この立場は、ハマス・ファタハ和解文書にも表明されている。今回目新しいのは、これが運動の最高機関シューラ会議によって承認された。ハマス指導部全体の立場表明という点だけてある。

*C ・ ジェイコブはMEMRIの研究員。

[1] ハマス憲章の英訳は次を参照:MEMRI Special Dispatch No. 1092, The Covenant Of The Islamic Resistance Movement – Hamas, February 14, 2006.

[2] Palinfo.com, May 1, 2017.

[3] Youtube.com/watch?v=smbIS-YIT1g, posted May 1, 2017.

[4] Palinfo.com, May 1, 2017.

[5] Al-Yawm Al-Sabi' (Egypt), May 1, 2017.

[6] Palinfo.com, May 1, 2017.

[7] Palinfo.com, May 1, 2017.

[8] Al-Yawm Al-Sabi' (Egypt), May 1, 2017.

[9] Youtube.com/watch?v=smbIS-YIT1g, posted May 1, 2017.

[10] Palinfo.com, May 1, 2017.

[11] Palinfo.com, May 1, 2017.

[12] Palinfo.com, May 1, 2017.

[13] Palinfo.com, May 1, 2017.

[14] Palinfo.com, May 1, 2017.


 

 

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