メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 調査および分析シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 1354 Nov/4/2017

JCPOAは機能しているのか
イガル・カルモン、A・サヴィヨン*

はじめに

JCPOA(包括的共同作業計画)を支持する者は、全員が協定は機能している≠ニいう話に依拠し、イランは効力を発した2016年1月以来協定を順守しているとする国際原子力機関(IAEA)の8回に及ぶ確言を信じている。

しかしながら、現実は次の四つのレベルで話や確言と矛盾しているのである。

a. 些細なことではない重大な諸問題で、精神≠ナはなく中身の実質で協定違反がある。

b. 協定の目的に違反する現場の諸展開がある。

c. 実際の査察を欠き、IAEAの確認に根拠がない。

d. 本当に査察があり、イランは協定を順守しているという意図的な不実表示(事実と異なる虚偽の陳述)に、IAEAがその役割を果している。

本報告は、協定が機能していない証拠を紹介するものである。

T JCPOAの違反

a、セクションT―イランは、IAEAが協定のセクションT をモニターすることを拒否している。これは、核爆発装置の開発に寄与できる諸活動≠フ実行をイランに禁じた条項である。

イランは、JCPOAのセクションTに従った査察を国際原子力機関に許していない。これは、核爆発装置に適したマルチポイント式起爆装置の設計、開発、組立、取得或いは使用≠ニ爆発診断システム(ストリークカメラ、フレーミングカメラ、フラッシュX線カメラ)の設計、開発、組立、取得或いは使用≠、イランに禁じた内容である。この一連の諸活動は、事業が非核目的≠ナ、更に査察対象を条件とし、合同委員会によって承認されない限り、実行できない。この違反が意味しているのは、核合意の最も核心的分野―核起爆装置のための開発オプション―において、協定の求める活動査察を、イランが拒否しているということである。

b、最新の遠心分離機の組立―イランは、協定が認めているよりも多数の最新式遠心分離機を組立て(IR−8)、操業(1E−6)している※1。

c、重水―イランの重水保有量は、協定が許可している量を越えている。IAEAの標準的確認法によると、重水量の変化は、重水がこの国の領土から国外に搬出される時にチェックされるのではなく、それを購入した国に到着した時だけにチェックされるからである。更に又、保有を許可されている重水の量の計算には、オマンに備貯され売却されてない量が、含まれていない。同時にイランは、重水の生産も続けているのである。

d、アラクのプルトニウム反応炉の炉心―イランの原子力庁(AEOI)の長官でイランの核交渉団メンバーのサレヒ(Ali Akbar Salehi)によると、イランはアラクのプルトニウム反応炉の炉心を解体せず、そのままにしている。サレヒによると、イランは研究用にそれを必要としている。サレヒは、セメントで塞がれたのは炉の外側のパイプラインだけで、イランが再稼働させるのに、長い時間は必要でないとも言った※2。科学・国際安全保障研究所(IISS)によると、イランは、改修アラク反応炉用に燃料のデザインを変えようとしている。これはJCPOAが要求していることと違う。

e、5%濃縮ウランの生産―イランは、許可量を越え、5%濃縮ウランの生産を続けている。このような違反行為が2回IAEAによって記録されている。イランは余分をオマンでの貯蔵用に輸出している。協定には存在せず許されていない手続である。

U JCPOAの目的に違反する現場の状況

a、JCPOAによると、濃縮ウラン8.5トンがイラン国外へ搬出されたが、IAEAはこれをモニターしていない。オバマ政権時代の国務省対イラン主任調整官マル(Stephen Mull)が、2016年2月の下院外交委員会の聴聞で証言したところによると、この国外搬出分はロシアで消えてしまった(しかしながら、可能性として考えられるのは、ウランが何処にあるか判らないということは、イランの友邦であるロシアが、イランへ戻した恐れもある)。

、オマンはイランの政治的衛星国であり、イランと対決する力はなく、イランの余剰重水と濃縮ウランの貯蔵所になっている。オマンにこの物質が貯蔵されているのは、協定違反行為を隠蔽するためで、フィクションどころの話ではない。

V 実際の査察を欠き、IAEAの確認に信憑性がない

 IAEAは、イランで本当の査察ができない。従って、イランがJCPOAを順守しているという確認は意味がない。以下その理由を述べる。

aIAEAが、実施を許されている査察は―それによってイランは協定順守の御墨付を手にしているわけであるが―、実際にはイランが許可する制限した地域でしか実施されていない。つまりイランが核地域と自称している所だけである。軍事施設を含め、それ以外の地域は、査察規程に含まれていない。更に、軍事基地と施設に関して言えば、イラン側は、IAEAの立入りを許すことはない、と強調している。

、協定は、イランに対して特異な査察の枠組をつくった。それは、ほかの核拡散防止条約(NPT)加盟国に対する査察よりも、厳しくない。例えば、追加議定書は、NPT加盟諸国の受入れが義務付けられている。しかしイランには自由意志が認められている。つまり、イランはいつでも追加議定書から離れることができるのである(例えばIAEAは、追加議定書のもとで許されている軍事施設の査察ができる)。イランがこれを拒否しても、JCPOAの違反とは見なされないのである。これでイランは軍事施設の査察を拒否できる。

c協定は、上部の政治機関をつくった。つまりJCPOA合同委員会である。これは、IAEAの独占的権限を減らし、その権限を政治的な上部機関へ移すためのもので、IAEAの法定的意志決定権のもとにある問題を裁定する、ことも狙いである。

IV 事実と異なる陳述―不実表示におけるIAEAの役割

一例えば、イランはJCPOAを順守し、IAEAは本当の査察を現地でおこなっているといった主張は不実表示である。

a,核の爆発装置の開発に寄与できる諸活動≠ノついて、セクションTに明示されているように、イランの拒否はJCPOAの違反であるが、イランが査察を拒否するのに、IAEAはこのイランの査察拒否を違反と考えず、問題を政治機関即ち合同委員会に任せようとする。

、IAEAは、パルチン軍事施設で、1回の恥ずべき査察をおこなった。それは、予め定められている政治決定に従い、イランの核可能性ファイルを閉じることを狙った代物である。IAEA査察官達は自分自身でバルチンを訪れず、その施設から採取したとするサンプルをイラン側から渡されただけで、サンプルの出所を確認する方法がなかった。更に、IAEAの天野之弥事務局長は、パルチン入りを数分許されただけで、機材はおろか携帯電話の持込みさえ許されなかったのである。この過程でIAEAは、何年も要求してきたのに、核技術者に対する質問さえしないことに、同意したのである。

、軍事施設の査察は、追加議定書及び国連安保理決議2231で許され、且又天野事務局長が査察権限を持っているという声明もあるのに、IAEAは、軍事施設査察を実行することによる権限の行使を拒否した。 

、カナダやインドのような重水輸出国は、IAEAの輸出管理システムに従っているが、IAEAはイラン絡みで、その輸送管理システムに違反している※3。

*イガル・カルモンはMEMRI会長、A・サヴィヨンはMEMRIのイランメディアプロジェクト長。

[1] 次を参照:IISS report "Update on Iran's Compliance with the JCPOA Nuclear Limits – Iran's Centrifuge Breakage Problem: Accidental Compliance," Isis-online.org, September 21, 2017.

[2] 次を参照:MEMRI Inquiry & Analysis No. 1341, Head Of Iran's Atomic Energy Organization: Only External Pipelines Of Arak Reactor Were Filled With Cement, Its Core Was Not; Within Five Days, We Can Begin Enriching Uranium To 20%, September 1, 2017.

[3] 次を参照:MEMRI Inquiry & Analysis No. 1348, The JCPOA's Critical Flaw Is Its Lack Of Real Inspection By The IAEA; Those Focusing On Iran's Ballistic Missiles And The JCPOA's Sunset Clause Are Evading The Urgent Issue – The Need For Real Inspection Now, October 3, 2017.


 

 

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