メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 調査および分析シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 1368 Jan/9/2018

イランの反政府蜂起 2017−2018
A・サヴィヨン、イガル・カルモン*

イランで発生した大規模デモは、遠隔の地の小さい町で労働者が参加しただけでなく、主要都市で中産階級と思われる人々も参加していた。発生から1週間、今回の蜂起は次のような性格を持つと思われる。

●蜂起は、明らかにイスラム共和国政権に反対する行動である。政権はこの側面の否定に躍起で、経済状況の改善を求めるデモであると説明している。しかしデモ参加者は、「独裁者に死を」、「ハメネイに死を」と叫び、イスラム共和国体制の廃止、ヒジャブ強制着用の中止、シリアとガザに対するイランの経済援助の中止(ノーシリア、ノーガザ、私の命はイランのためにある=Aというスローガンに示される)。ソーシァルメディアでは、国民投票の要求、イスラム法による支配体制の廃止、自由選挙、ヒジャブ着用義務の廃止、冨の公平な分配、法の独立、報道の自由、宗教と国家の分離、男女平等の要求が表明されている。

写真1


ソーシァルメディで流されている抗議者のスローガンを掲載したポスター: Twitter.com/pessarbad/status/948452946232119296, January 3, 2018.

2017年11月20日のMEMRI TVクリップでは、テヘランでの抗議デモが、今回の蜂起の先駆であることを示している。そのなかで次の要求が表明された。「貧困のため我々の男達が盗み女達は身を売る状態なのに、我々の金がイラク、レバノン、シリアへ送られている」―2017年11月20日。写真2

●この人民蜂起でこれを主導する指導者は判明していない。2018年1月3日、都市や地方での発表そして今日のデモ時、イラン・アザディ(自由イラン)デモ調整司令部≠ニいう組織名のサイン付きが、ソーシァルメディアに出回った。しかし、この組織についてこれ以上のことは不明である。

写真3


Twitter.com/iranazadi1395/status/948478702383456258, January 3, 2018.

●イラン政権は、この蜂起弾圧に革命防衛隊(IRGC)を今のところ投入していない。この任務にはバシジ(民兵隊)と警察を使っている。2009年の時は、その投入がかえって反発を呼んだので、武力の大々的投入は控えていると思われる。

●改革派陣営は、権力を奪われ表舞台から消えたが、その最も著名な人物が、政権の沈静化呼びかけに使われている※1。政権側が、蜂起拡散防止のための橋渡し役として、彼等を利用しているのである。その目的の一環として、内務省はイランの諸政党を招集し、デモ隊が提起している経済問題を協議しようと呼びかけている。呼びかけの対象には、活動禁止になった改革派も含まれている。

●シリアでの蜂起と違って、今のところ治安関係要員が寝返って抗議運動側についたという情報はない。ツィートされたクリップ(下)には、ひとりの警察官がデモ隊に向かって自分は、「自国民と戦う兵隊にはならない」と説明している。

写真4


Source: Twitter.com/ArminNavabi/status/948001957884542977, January 1, 2018.

写真5

●蜂起の初期段階で、イデオロギー上の指導者はまだ表舞台に現れていない。登場した政治家もロハニ大統領だけで、抗議者の動機は理解するとしながらも、抗議者の行動を制限しようとしている。一方最高指導者アリ・ハメネイ師は、殉教者の遺族会議を招集し、その会議宛声明で、サウジアラビア、イスラエル、アメリカを蜂起の黒幕として非難した。

イランのハメネイ最高指導者は、人民蜂起について、「イランの政府に反対する者全員が手を組んでいる」として、イランの敵に非難の矢を向けた。

写真6

●ロハニ大統領は、経済危機を招いたとして体制を非難し、国家予算総額3600億トマン(ドル換算で約1000億ドル)のうち2000億トマンは、自分のコントロール下にない、と説明した※2。つまり、国家予算の半分以上が政府の自由にならず、ハメネイ最高指導者と革命防術隊(IRGC)の手中にあるということである。

●この体制内では、蜂起をもたらした者は誰かという問題で、論争が起きている。イデオロギー陣営は、ロハニ大統領とその経済政策を非難している。国民に対する直接補助を削減し、税率をあげ、基本必需品の物価も値上げなどを含む政策を批判し、腐敗を非難しているのである※3。一方ロハニは、自分の師であった故ラフサンジャニと同じように、ハメネイ最高指導者と革命防衛隊(IRGC)の政策を批判している。革命を輸出し中東にイランの覇権を構築する政策である。このため莫大な金が国民のためではなく、軍事面とイランの息がかかった地域勢力のために支出されているとした。MEMRI TVクリップ(下)は、この問題に関するラフサンジャニの声明とハメネイの反論である。

イランのラフサンジャニが体制派の住民弾圧に抗議―2016年1月22日

写真7

トップの政治ライバルを批判するハメネイ最高指導者―ミサイルより話合を望むのは反逆行為、2016年3月19−29日

写真8

MEMRI TV クリップ(下)は、「長射程ミサイル発射用の地下ミサイル基地建設に大々的支出」に関する内容。

イラン長射程ミサイル発射地下基地を公開―2015年10月14日

写真9

イラン地下サイロから弾道ミサイルを発射―2016年3月8−9日

写真10

MEMRI TV クリップ(下)はイランの国境外における軍事基地を示す―革命防衛隊司令官アリ・ジャファリとヒズボラ書記長ハサン・ナスララの声明を裏書き。

革命防衛隊ジャファリ司令官言明―我々はシリアを含むこの地域のいずこにあってもアメリカとイスラエルに対するレジスタンスを支援する―2014年4月21日

写真11

ヒズボラのナスララ書記長―我々は1982年以来イランから道義的政治的そして物的支援をうけている―2012年2月6日

写真12

●イランは、蜂起を指示しているとして西側特にイギリスとアメリカを非難しているが、イラン政権とその人権弾圧に対してはっきりと反対を表明したのは、アメリカのトランプ大統領とペンス副大統領だけである※4。ヨーロッパの指導者は殆ど何も言っていない。イギリスのメイ首相は、抗議者の要求を考慮することを求め、政権側に対する支持を表明した※5。一方フランシスのマクロン首相は抵抗者側の被害数に懸念の意を表明し、政権側に抑制を求めた※6。ドイツのガブリエル外相も抗議者側の死者に懸念を表明し、イラン政府に市民の権利を尊重するようアピールした※7。MEMRI TVクリップ(下)は、ハメネイが蜂起をイランの敵のせいにして非難するところ:2009年の事件では抗議者を愚弄。テヘランにおける金曜日説教で語るハメネイ最高指導者―この馬鹿共は、ジョージアのようにイランでベルベット革命を起せると考えた―という趣旨である2009年6月19日

写真13

●イランの蜂起に関する西側の報道は、アラブの春に関する西側の報道とは違っている。後者の報道では、問題を深く掘りさげ総合的且つ同情的なとりあげ方をした。今回の件に関しては、大々的ではないし抗議者に同情的でもない。このため、ロンドンのBBC本部に抗議する者がでてきた。その一例は下の通り、次のように書かれている。

私は、ロンドンのイラン大使館前で実施されたデモに参加し、今帰って来たところである。デモ参加者達は、イラン国民との連帯を叫んでいた。スローガンのひとつには、「アヤトラBBC、恥を知れ、恥を知れ」というのがあった。抗議者に関するBBCの偏見にみちた報道のためである。

写真14


Source: Twitter.com/KavehAbbasian/status/948342990745034752, January 2, 2018.

分析

イラン政府がインターネットアクセスとソーシァルメディアをブロックすれば、国民の抗議参加レベルに悪影響を及ぼす。今のところその徴候はない。

政権は、これまで活動を禁じていた政治集団との対話の用意があることを、表明している。しかし、抗議者達は改革派反対のスローガンを叫んでおり、自分達のスポークスマンとはみていない。つまり、この行動で騒ぎが静まることにはならない。

現時点で蜂起者達が、さまざまな政治的メッセージをテコにできる指導部を知らないという事は、蜂起継続に障害が生じるであろう。

*A・サヴィヨンはMEMRIのイランプロジェクト長、イガル・カルモンはMEMRI会長

※1元改革派大統領ハタミは、政権によって取材に応じることやイラン出国を禁じられているが、改革派の闘争聖職者党の政治集会で政権側の立場を繰返し表明し、抗議者達を人殺しとすら非難し、「御都合主義者、公共の平和を乱す者が、敵の犯罪目的を実行している。平和と安全を乱し、公有財産を破壊、宗教と民族の聖なる価値を汚し、無辜の人間を殺すことすらしている」と主張した。政権を支持する彼の声明は、BBCによってツィートされた。ハタミ政権時代の改革派大臣モハジェラニ(Ata`ollah Mohajerani)は、「BBCとVOA(ボイス・オブ・アメリカ)は、熱をあげ大騒ぎして抗議を報道している。彼等がイランとイラン人のことを知っているのなら、この(抗議の)波に根拠がないことを、理解したであろう」と言った。Kayhan, London, January 2, 2018

※2 Asr-e Iran (Iran)、January 1,2018

※3イランの第一副大統領ジャハンギリ(Eshaq Jahangiri)は、「ロハニ大統領と政府を敵祝するイデオロギーの扇動が、不穏情勢をつくりだしたのである。おかげで経済抗議が急速に政治的を持つ人民蜂起に発展した」と言った。次を参照:

MEMRI Special DispatchNo.7256, Popular Uprising Against The Iranian Regime And Its Policy-2017, December 31, 2017

※4アメリカの国務省スポークスマンHeather Nauertは「制裁は、アメリカがイランの行動に対処するためのー手段であり、アメリカは人権侵害の動きを注意深く監視している」と述べた。Ap. January 2, 2018。

※5メイ首相のスポークスマンは、「抗議者達が提起している当然且つ重要な問題について、意味ある話合いが必要である、と我々は信じる。イラン当局がそれを許すことを期待する」と言った。Reuters. Com, January 2,2018

※6 Elysee.fr, January 2, 2018

※7 Reuter, January 1, 2018


 

 

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