メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
中東報道研究機関




前のページ
前のページ
プリンターフレンドリー
プリンターフレンドリー


THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 3076 Jul/24/2010

フリーダム船団はシリアにこそ必要
―パレスチナ人ジャーナリストのシリア批判―

リベラル派ウェブサイトAafaqに、パレスチナ人ジャーナリストのラシード(Zainab Rashid)がシリア関係の記事を掲載し、シリアの宣伝機関はシリアの国内事情から世間の目をそらすために、ガザ船団問題を利用していると非難、アサド一族による抑圧、深刻なシリアの経済状態と人権問題は、ガザよりも悪いのであるから、フリーダム船団が必要なのはパレスチナ人よりむしろシリア国民の方である、と論じた。以下その記事内容である※1。

シリア人がフリーダム船団に参加したと聞けば、人々はシリアが山積する問題を克服したと勘違いする
 シリア国民が所謂フリーダム船団≠ノ参加したと聞いて、人々はシリア国民について間違った印象を抱いてしまう。シリア国民は彼等の抱える国内外の問題を全部克服、解決し、最早やることがなく手持ち無沙汰になったので、他者の問題にかかわり、解決に手を貸し、封鎖打開に努力しているといった印象である。
 イスラエルが(船団拿捕事件後)ガザとの連帯を表明するシリア国民を釈放すると、シリアの駐ヨルダン大使が彼等をヨルダン・シリア国境まで同行して送り届けた。そんな話を聞くと、シリア国は国民の利益、安全、福祉を真先に考え、国民がどこにいようとも、そのニーズに特別の配慮をする、と皆が考える。そう勘違いするのも当然だろう。

シリアの外相と情報相が、船団乗員の釈放後シリア人参加者と連絡を絶やさなかったと聞けば、シリア政府は国民を敬愛していると、ほぼ全員が考えてしまうだろう。

そしてクライマックスが、シリア人の船団参加者に対するシリアの大統領の謁見である。イスラエルが船を拿捕してアシュッドット港に回航した後、留置場に入れられた参加者が味わった暴力と拷問。これをこと細かに聞いた…大統領が親しく接見したわけで、数人だけでなく万民がシリア国民をうらやましく思うだろう。

船団のシリア人参加者に対する政府の扱いとプロパガンダ上の態度は、エルドアン(首相)という威勢のいいトルコの波に乗ろうとしているだけのことで、私を含め誰でもこんなことは知っている。シリアはあらゆる分野で状況が悪化しており、地上の牢獄や地下牢からは自由の戦士のうめき声と悲痛な叫びが聞えてくる。政権はシリアの船団参加者にスポットライトをあて、注意をそらそうとしているのである。

ハマス支配の前まで、ガザの経済状態、教育事情、生活環境、自由度はシリアより良かった
 ガザの経済状態、教育事情、生活環境そして自由度は、ハマスがガザを支配する迄、アサド一族と苛烈な治安機関の支配下にあるシリアより格段に良かった。シリアはこの二つの支配で数十年も遅れており、おかげでシリアは中東地域のみならず世界でも最貧国のひとつになっている。そして、この支配者達が国民の自由を奪い、最低限(の自由)を求めて声をあげる人を監獄にぶちこみ捕囚≠フ身にしてしまう。

シリア国民は捕囚の身
 シリア国民は、アサド政権の地下牢に呻吟する捕囚≠ナある。男女の如何を問わない。大物独裁者が死亡した時前途に光明が現われたかに見えたが、息子が後を継ぎ解放の希望は失われてしまった。現政権はシリアの全国民を敵視する。誇り高い国民は歴史的和解の道を何度も提供したが、政権はこれをことごとく食い物にしてしまった。地下牢に呻吟する国民は、人間らしさや道義或いは気品を欠き国民と故国を敵視する一派に身ぐるみ剝がされ、捕囚≠フ身に落ちているのである。

シリアの地方州では学校は大抵泥づくりである。しかしガザにはそのような学校はない。生徒60人のすし詰め教室もない。ガザでは、封鎖後も食糧が不足したことはない。シリアでは、食糧が慢性的に不足し、食糧は市場にでてこない。 レバノン・シリア国境を経由して密輸されたものを除けば、食糧品の多くは市場に殆んど出廻らない。ガザのインターネットサービスは、哀れな程寥々たるシリアとは雲泥の差である。ガザとウェストバンクには、数百の禁止ウェブサイトリストなどというのはない。ハマスが権力の座につくまで、ガザの給水と電力事情は、シリアより格段に良かった。ハマスのクーデタ後数万人の公務員が職を失ったが、正規の給料を今でも貰っているのである。フリーダム船団が必要なのはガザの住民かシリア人か、どちらなのだろうか。

ハマスがガザを占領する迄、メディアの活動は極めて多彩であった。いろいろな主張があり、なかには真向から対立する意見が表明され、メディアはゆるやかな規制のもとで言論の自由を享受し、報道を続けていた。当時、メディアの自治政府批判は、検閲なしで行われていた。各派それぞれに衛星テレビとラジオ放送のチャンネルを持ち、新聞、雑誌を発行して、主義主張を表明し、まさに百花繚乱の状態であった。

シリアでは、自分の見解を表明した廉で逮捕されたアブダッラー(’Ali Al-‘Abdallah)が※2、その頃法廷で裁きをうけていた。捕因の身のシリア国民かガザ住民か。フリーダム船団が必要なのはどちらなのだろうか。ガザ住民は、言論弾圧を知らなかった。ハマスが登場して今日のような苦しみを味わうようになったのである。そのハマスは、周知のようにシリアとイランに支持されている。

シリアでは囚人達が刑務所で虐殺さる事件が起きる。シドナヤ刑務所(2008年)※3、タドモル刑務所(1980年)がその例だが、ハマでは都市まるごとの虐殺(1982年)が起きた。ガザ住民は刑務所で虐殺されたことはない。シリアではズアビ首相 (Mahmoud Al-Zu’abi, 2008年)やカナ―ン内相 (Ghazi Kana'an, 2005年)のような閣僚が暗殺される。しかしガザでは首相や内相が暗殺されたことはない※4。シリアではこの40年間非常事態宣言がでたままである。ガザにはこのような不法な緊急令などだされていない。弾圧、抑圧、強制に苦しんでいるのはどちらか。フリーダム船団を必要とするのはどちらであろう。

アサド一族のギャング共は、国家の資源を私して枯渇させ、国民を虐待し人権を踏みにじってきた。今日シリア国民の間には、自由を求める青年男女がいる。自由な国を築き近代世界の仲間入りを果すべく、アサド一族の独裁打倒を決意している。

シリアの沿岸を航行するフリーダム船団は、シリア国民にこそ必要である。シリアへ行けば世界の良心は、アサド(政権)の桎梏に苦しむ国民に注目するようになるだろう。このイニシアチブをとることのできる人はいないのか。それとも誰も関心なしなのか。

※1 2010年6月22日付www.aafaq.org

※2ダマスカス宣言の署名人のひとり。人権活動家で逮捕され服役。服役中に書いた記事がシリア・イラン関係を傷つけるとして再逮捕された。
2010年6月18日付www.thisissyria.net

※3 2008年9月28日付MEMRI I&A No.466「シリアにおける大量虐殺と人権侵害」を参照。http://www.memri.org/report/en/0/0/0/0/0/0/2864.htm

※4カナ―ンはシリアの内務相であった。2005年10月執務室で自殺したと報じられたが、元レバノン首相ハリリ(Rafiq Al-Hariri)暗殺にかかわったとの疑いが浮上し、自殺を強要され、政府に詰め腹を切らされたとの噂が流れた。


 

 

すべての翻訳の著作権はメムリが所有する。
記事の引用の際は必ずメムリの名前を記載すること。

著作権に関する問い合わせはここをクリックして下さい。

ウェブサイト開発: WEBstationONE, ウェブホスティング: SecureHosts.
Copyright © 2001, 2002, 2003 All Rights Reserved.