メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 6763 Feb/1/2017

シリアのアサド大統領重体か
―アラブメディアの情報―

ここ数日アラブのメディアに、アサド大統領が重病或いは重傷を負ったというニュースや噂が流れている。その信憑性は定かではない。ニュースそのものは、ソーシャルメディアに掲載されたのが最初で、ボディガードのひとりが殺そうとしたとか、脳卒中ないしは心臓発作であるという内容であった。なかには、治療中弟のマヘル(Maher Al-Assad)が大統領代行になっているという話もある。

この後アラブのメディアに同じ主旨の記事がのった。それには、アサドに近いレバノン紙と非アラブ紙が含まれる。興味深いのは、本件に関するアラブの新聞報道の多くは、発行後間もなくして、ウェブサイトから削除されたことである。

アラブのメディアとソーシャルメディアにのった一連の記事内容から、シリアの反体制派ウェブサイトが本件を論議し、ニュースが正しい場合の今後のシナリオを論じた。

シリアの政権とその支持者達は、アサド重体の噂を否定し、大統領は極めて健康と強調している。

次に紹介するのは、アラブ及び非アラブメディアで流れたニュースと噂、そして反体制ウェブサイトのポストアサドのシナリオである。

護衛によるアサド銃撃の噂―フランス紙Le Point

フランス日刊紙Le Pointは、2017年1月24日付紙面で、アサドの健康問題について触れ、「アラブのソーシャルメディアに流れている噂によると、1月21日アサドがイラン人護衛に銃撃され、物々しい警備下ダマスカスの病院に搬送された、なかには死亡とした内容もある」と報じた※1。

アサドは脳卒中か心臓発作―サウジ政府紙`Okaz

サウジ日刊紙`Okazが1月27日付で、「本紙の独占情報源≠ノよると、アサドが脳卒中になり、症状を隠そうとしたが、駄目であった」とし、「アサドは最近(1月26日)、イランの国会議長ラリジャニのアドバイザーアブドラヒアン(Amir Abdollahian)と会ったが、それ以外は、意思決定にかかわると複数の重要会議を欠席した。更にダマスカスのアル・シャミ病院で特に最近になって定期的に検診をうけている。検査はロシアの医師団が担当している。ロシア訪問時にモスクワで検査をうけている」、「確証はないが、さまざまな情報によると、アサドは心臓発作に襲われ、現在大統領宮殿に隔離され、外部とは厳重な遮断状態におかれて、イラン革命防衛隊(IRGC)の統制下にある」と報じた※2。

写真1


「アサドは脳卒中か」と題する'Okazの記事。

アサド重病説―湾岸諸紙は発表記事削除

アサドの健康状態に関する報道は湾岸紙にも掲載されたが、すぐ各紙のウェブサイトから削除された。情報の確認がとれないためか、それともほかに理由があるのか、不明である。1月27日、Khalij Onlineニュースウェブサイトは、「アサド暗殺?新聞によると犯人はボディガード」と報じた※4。そして翌日にはクウェート紙Al-Qabasが「アサド重体―心臓発作がボディガードの銃撃か」との見出しで発表した※5。しかし、二つ共にこの後削除された。

写真2


Kahlij Online の報道。「アサド暗殺?新聞によると犯人は警護員」とある。

アサド心臓発作、弟マヘルが作戦指揮代行―親アサド派レバノン紙

レバノンの報道もアサドの健康問題を報じた。1月27日付紙面で、親アサド派レバノン紙Al-Diyarは、ダマスカスの准政府筋の情報≠引用する形で、「アサドが脳卒中に倒れ半身不随で片方の目が見えない状態で入院。過労が原因」、「現在、危機状態を脱しているが、入院して加療中」、「医師団は休息安静を勧告。再発すれば危ないと警告」、「ロシアのプーチン大統領が脳外科医3名を派遣」、「シリアの情報機関は、アサドの状態に関する情報漏洩防止を指示」、「アサドは、1〜2週間で職務復帰が期待される」と報じた。

その日遅く同紙のウェブサイトは「アサドの弟マヘルが大統領代行として勤務についており、退院まで職務代行を続ける」、「マヘルはシリア軍参謀総長及び国防相に補佐され、シリアにいるロシアの専門家、イラン及びヒズボラの指揮官達と協調しつつ軍を指導」と報じた※6。

面白いことに、二つの記事がでた2日後、Al-Diyarが、アサドの健康状態に関する馬鹿らしい噂≠否定し、「噂を一蹴するため、アサドがテレビにでる」と報じた※7。

反シリア政府で知られるレバノン紙Al-Mustaqbalは、著名なシリア反体制派人士の発言を引用する形で、「信頼すべき筋によると、アサドは脳卒中に倒れ、アル・シャミ病院に搬送され、厳重な警備下で加療中」と報じた※8。

アサドは病気、弟が引継ぐ可能性あり―ソーシャルメディア

前述のように、ソーシャルメディアにはアサドの健康状態に関する記事が沢山でた。例えばAl-Jazeeraのシリア人ジャーナリスト、アル・カッセム(Faisal Al-Qassem)は、猛烈な反アサド政府で知られが、1月29日付で自分のフェイスブックに、赤色面に最新情報≠ニ銘うち、「暴君アサドの病気に関する情報について、ここ数日いろいろと確認作業をしてきた。本件については、相反する情報がある。昨日私は、アサドが脳卒中で倒れた話は確度90%という情報を得た…私の個人的な情報源をベースとして現時点で私が言えるのは、アサドは病床にあり、意識はあるが、死亡の危険性70%である…」と書いた※9。

写真3


カッセム(Faisal Al-Qassem)のフェイスブック, January 29, 2017.

イギリス在住の政治評論家ターハ(Amjad Taha)は、一連のツィートで、「占領下ダマスカス内の情報筋≠ェ、アサドは重病、ロシアの軍部隊が常駐」と書いた。ターハは「アサドを治療するため、イランと東欧の或る国から多数の医師が送られた」、「ロシアは医療支援を拒否し、アサド警護だけをおこなっている」と書いている ※10。

写真4


「イランから医師団到着」と題するターハ(Amjad Taha)のツイート。January 29, 2017.

別のツイートAbu Rakan Al-dafariのアカウントには、「アサドが重病で、そのため厳戒体制がしかれ、ロシア軍が配置につき、イランから医師達が来た」と書かれている※11。

ツイーター・ユーザー@90Drkurdyは、「アサド脳卒中に倒れたというニュースは正しいようである。ロシア軍憲兵隊がダマスカスを囲んでおり、マヘル・アサドの写真がラタキアの到る所に貼られている」とツイートした※12。

写真5


アサドの脳卒中に関するDrkurdyのツイート, January 29, 2017.

アサドの弟マヘルが大統領代行に任命されたというニュースは、個々人がツィートしている※13。

例えば、シリア作家協会の副会長ダルコウシ(Muhammad Darkousi)は、「ロシアの指示でマヘルが革命指導に就任か。数日後には事実関係が明らかになる」とツィートした※14。

写真6


ダルコウシ(Muhammad Darkoushi)のツイート, January 28, 2017.

アサド重病説を否定―シリアの大統領府、親アサド派レバノン政府関係者

2017年1月27日、シリア大統領府はアサド重病の噂を否定した。シリア政府の通信社SANAが出した声明、シリア大統領府の公式ツイッターは、「共和国大統領府は、バシャル・アサド大統領の健康状態に関する噂とニュースを否定する。すべて嘘である。アサド大統領は極めて正常な健康状態にあり、健全な体で職務を遂行している」と主張した。

その声明によると、「シリア国民は、このような嘘には、すっかり慣れっこになっている。戦争の初めから今日まで、沢山の嘘が流されてきた。(シリア反対派とその支持者の)地に落ちた士気をたかめようとするための嘘であり、白中夢である。あざけりの対象にしかならない…この噂の発信源は、正体の割れている諸派や新聞で、偏見まみれであることも判っている。この嘘は、彼等がここ数年シリア対して抱いてきた願望がすべて裏目にでて、戦場及び政治レベルで流れが変り始めた時に流されるようになった」とある※15。ロシアの通信社も、SANAの否定記事をツィートした。

写真7


シリア大統領府のツイート, January 27, 2017

アサド政権に近いレバノンの要人達も、噂を否定している。例えば、アル・サエッド大将(Jamil Al-Sayyed 退役)は、かつてレバノンの情報機関長で、ハリリ首相暗殺関与の疑いで逮捕されたこともあるが、「アサド大統領脳卒中の噂あり!彼等はアサドに対して戦争を仕掛け、破綻し、(今や)儚い願望や占いに頼るだけになったのである。覚悟しておいた方がよい。(アサドは)引続きお前達を苦しめるだろう…」とツイートした※16。

写真8


サエッド(Al-Sayyed)のツイート, January 26, 2017.

アサド大統領に近いレバノンの前閣僚ワッハブ(Wiam Wahhab)も、アサド重傷説を否定し、1月29日付フェイスブックに、「待ち構えている者全員に告ぐ。アサド大統領は元気である。戦争指導にあたっており、ダマスカス住民に対する飲料水の給水回復に取組んでいる」と書いた※17。

写真9


ワッハブ(Wahhab)のフェースブックポスト, January 29, 2017.

アサド後の動きを想定する反体制派ウェブサイト

アラブメディアとソーシァルメディアでアサド重病説が流れると、反体制派のウェブサイトが一斉にこの問題をとりあげ、ニュースが正しい場合の今後について、いろいろなシナリオを描いた。

例えば、反対派ウエブサイトBaladi-news.comでは、ムハンマド(Ayman Muhammad)が「アサドの死は体制崩壊といってよいのか」と題して、次のように述べた。

「たといアサドが死亡したとか半身不随になったという噂が本当で、政権とその同盟者がこれを認めたとしても、政権が倒れたと宣言するわけにはいかない」、「アラウィ派は政権をしっかり支えており、体制維持のためアサドの後継者はすぐに決まる」、「アサドが死んでも、シリアの反徒側に大きい意味はなく、革命の勝利でないことは確かである。戦場における反体制派の惨胆たる状況のためである」、「たといアサドが駄目になっても、ロシアが体制派を表面的に変えるだけである。数名を入れ換える。一緒にやっていける人物を数名反体制派からとりこむ。ロシアがコントロールできる者を取込むだけである」、「バシャル・アサドの死後、体制の外面(的イメージ)に変化があったとしても、シリアの情報機関をベースとした核心部分は残る。それはロシアのシリア支配の手段として奉仕する」と書いた※18。

同じように、ジャーナリストのアジズ(Fuad `Abd Al-`Aziz)が、反体制派ウェブサイトZamanalwal.netでバシャルが死ねばどうなる≠ニ題して、アサドの死が本当であった場合のシリアの今後について分析し、可能性のあるシナリオを二つ提示した。ひとつは、イランとロシアが支配するシナリオ。第二がいくつかの地域に分裂するシナリオで、この場合は、アメリカ、ロシア、トルコ或いはイランがそれぞれの地域を支配する。アジズは、西欧に支援を求めよ、と反体制派に呼びかけた※19。

[1] Lepoint.fr, January 24, 2017.

[2] 'Okaz (Saudi Arabia), January 27, 2017.

[3] Twitter.com/OKAZ_online, January 27, 2017.

[4] Alkhalijonline, January 27, 2017.

[5] Alqabas.com, January 28, 2017.

[6] Al-Diyar (Lebanon), January 27, 2017.

[7] Al-Diyar(Lebanon), January 28, 29, 2017.

[8] Al-Mustaqbal (Lebanon), January 27, 2017.

[9] Facebook.com/falkasim, January 29, 2016.

[10] Twitter.com/amjadt25, January 29, 30, 2017.

[11] Twitter.com/zaaaz41114, January 29, 2017.

[12] Twitter.com/90Drkurdy, January 29, 2017.

[13] Twitter.com/L00n7,Twitter.com/aboyosha3homs, January 29, 2017.

[14] Twitter.com/Mohamedarkoushi, January 28, 2017.

[15] Twitter.com/presidency_sy?lang=en, SANA news agency (Syria), January 27, 2017.

[16] Twitter.com/jamil_el_sayyed?lang=en, January 26, 2017.

[17] Facebook.com/wiammwahhab, January 29, 2017.

[18] Baladi-news.com, January 30, 2017.

[19] Zamanalwsl.net, January 30, 2017.


 

 

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