メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 6778 Feb/15/2017

南レバノン住民とUNIFIL隊との衝突はアメリカに対するイランのメッセージ
―反ヒズボラのシーア派記者の報道―

2017年2月3日、南レバノンで地元住民と国連暫定駐留軍(UNIFIL)パトロール隊との間に衝突事件が起きた。国連安保理決議1701の一環として南レバノンに国連軍が駐留しているが、事件は二ヶ所で発生した。ひとつはスロベニア部隊のパトロール隊、もうひとつがイタリア部隊のパトロール隊で、事件は別々の所で同時に起きた。この衝突の結果、二つのパトロール隊は地域から撤収した。比較的長期間平穏であったところへ、いきなりしかも同時に事件が起きたので、事件を起した住民の意図について、さまざまな憶測が流れている。

2017年2月5日、この事件に関して、反ヒズボラのシーア派報道記者アミン(`Ali Al-Amin)は、最近緊張を増しつつあるアメリカ・イラン関係が背後にあると指摘。事件は欧米に対するメッセージで、イランからの命令でヒズボラが住民に襲撃させたとし、国連暫定駐留軍UNIFIL、レバノンそしてイスラエルが、イランの反米闘争で取引材料になっている、と主張した。次に紹介するのは編集長をつとめるウェブサイトJanoubiaに掲載した記事である※1。

写真1


南レバノン住民で起きたUNIFIL隊と住民の衝突(image: Janoubia.com, February 5, 2017)

ヒズボラ支持者と国際部隊との間には長い間事件がなく、煽動による襲撃もなかっただけに、レバノン特に南レバノンの関係者は驚いている。2日前の2月3日、同じ日同じ時間に二ヶ所で衝突が起きたからである。襲撃の目的、理由は何であったのであろうか。

UNIFIL部隊と(南レバノン)住民の間には、長い間事件が起きなかった。2006年の戦争(イスラエルとヒズボラの戦闘、第2次レバノン戦争)時、国連安保理1701採択前後に衝突事件があった。その年、そしてその後の2年間、リタニ川の南に展開する国際部隊の駐留地域で、安保理決議1701の履行にからんで、何件か衝突が起きたのである。地元住民とは、隠語の一種でヒズボラ所属集団をさす。UNIFILの任務遂行を妨害しようとして、普通の住民特に女性、子供そして老人を動員し、ヒズボラの拠点など他者の進入を望まぬ地域へ、国際部隊が入ろうとすると、妨害したのである。当時ヒズボラは普通の住民に、国際部隊がヒズボラ隊員の住所や(ヒズボラの)拠点に関する情報を、イスラエルに流している、と説明していた。(そのため)国連軍のレバノン撤収を求める声もあがった。

この金曜日(2月3日)、ティレ管区の西部地域で、正確に言えば二つの町(Majdel Zoun、Al-Mansouri)の中間域で、以前の事件を想起する衝突が起きた。UNIFIL筋によると、当時車両3台を含むスロベニア部隊のパトロール隊が、住民達≠ノよって待伏せ攻撃をうけ、同時にイタリア部隊のパトロール隊が、アル・マンスーリの住民達≠ノ伏撃された。

別の情報筋によると、スロベニアのパトロール隊が、レバノン軍のパトロール隊を伴わずにマジデル・ゾウン地域に入ったところ、不審に思った住民達がたちふさがった。国連のパトロール隊の前に人々が集まり、驚いた兵隊達が、アル・マンスーリの方向へ逃げて行った。その途中でUNIFILのパトロール車が民間車両と衝突し3台に損傷を与えた。パトロール隊と住民との緊張が一段と高まった。(第2の事件については)イタリアのパトロール隊が、たまたまアル・マンスーリにいたため、兵隊と住民の間に衝突が波及した。

この状況説明は、事件発生の経緯に疑問を生ぜしめる。国連(が発表した声明)は、事件の発生を正当化できないと言明し、誰かが煽動して、(二つの)UNIFILパトロール隊と問題を起させたのであるとした。二つの事件で死者はでず、物的損害にとどまったが、本事件はアメリカ・イラン(間の緊張)エスカレートに照らして、対処する必要がある…。

二つの事件は、(レバノンの)政府関係者のなかには事件と呼ぶことに慎重な者もいるが、UNIFIL司令部の声明がなかったなら、うやむやにされた可能性が強い。その声明は「UNIFILのパトロール2隊が…攻撃的な男達を中心とする複数の集団によって妨害された」と指摘している※2。これは、UNIFILと所謂住民達≠ニの緊張再発の可能性、を示唆している。過去にも同じようなことがあった。イラン・アメリカ間の緊張エスカレートの徴候がさまざまな形で表現されたのである。南レバノンは、このメッセージの発信地としては恰好な地域のひとつである。それは、ヒズボラが南(レバノン)の安定のかなめのひとつであり―その安定で、南(レバノン)の住民だけでなくガリラヤ地方(イスラエル)の住民も恩恵をこうむっている。

二つの事件は、偶然であったかも知れず、計画的犯行だったかも知れない。いずれであっても、アメリカ・イラン紛争がレバノン、国際軍(UNIFIL)そして敵イスラエルに影響することを、関係者に伝えるメッセージであった可能性が高い。

南のカードを切る姿勢は(つまり南レバノンにおける緊張エスカレートの威嚇)、或いはもっと正確に言えば、現在の力の均衡をシフトすることは、イラン・アメリカ関係がどうなるのかにかかっている。ヒズボラは、自爆攻撃を(イランの支配的)法学者によるファトワをベースにしているとしているので、南部(レバノン)正面で爆発となければ自爆或いは殉教作戦につながることを、知っておくべきである。

トランプ式の対イラン緊張関係のエスカレートは、南(レバノン)で、反応がでた。つまり、UNIFILは再びヒズボラの人質になった。これからベイルートが(議会)選挙の発表をするが、レバノンが無政府状態に向うか、荒涼とした状況で落着くのか、いずれかの季節を迎えることになるだろう。

※1 Janoubia.Com, February 5, 2017

※2 UNIFIL司令部のだした声明には、「本日朝、二つのUNIFILパトロール隊が、アル・マンスーリ−マジデル・ゾウン(セクター西)の地域において、攻撃的な男達を中心とする複数の集団によって、妨害された。男達は平和維持兵と国連の機材に物理的危害を加えようとした」、「UNIFILパトロール車は、この地域から安全地帯に脱出するため、道路封鎖用に使われていた数台の民間車両を、慎重にわきへ押しやった」とある。Unifil.unmissions.org. February 3.2017.


 

 

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