メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 6823 Mar/14/2017

エジプト各地で発生した抗議デモ
―発端は補助金付パンの割当て削減―

最近エジプト政府が、政府の補助金で安く買えるパンの割当てを、1人1日5枚から3枚に減らす決定を下した。そのため各地で抗議デモが続いている※1。経済危機のため、政府がこの措置をとったのである※2。抗議デモは、それぞれ数百人の規模であるものの、ギザ、アレキサンドリア、ミニヤ等で発生している※3。デソークの町では、デモ隊が線路に入り、列車運行を妨害した※4。アレキサンドリアでは、デモ隊が供給省事務所の前で抗議。カフル・アルシェイクでは、デモ隊がアルシシ打倒≠ニかアルシシは人民の迫害者だ≠ネどと叫んだ※5。

エジプト人記者カロウム(Hassanein karoum、ロンドン発行紙Al-Quds Al-Arabiのためエジプトの報道を論評)は、補助金つきのパンを買いに来た住民達が、店主から割当て数が減らされたと聞いて驚いた、と報じている※6。

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左:デ痩躯のソウクの抗議デモ(Al-Yawm Al-Sabi', Egypt, March 7, 2017); 右: アレキサンドリアの抗議デモ(rassd.com, March 7, 2017)

抗議に対応して、供給相アル・モーセリー博士(`Ali Al-Moselhy)は、3月7日に急拠記者会見し、決定は、補助金制度の悪用、腐敗退治が狙いである、と述べた。各パン屋に供給省が発行したカードが配られており、そこに補助金つきパンの販売許可数が明示されているが、それが悪用されているという※7。大臣は国民に、パンを含む主食品に対する補助という形で行われている援助自体は、カットされないと約束した。更に、アレキサンドリア及びギザの両県、カフル・アルシェイク、アルワディ・アルジャディドの両地方のいくつかの地域では割当カットから免除されるとつけ加えた※8。

補助金付パンの割当て削減決定で、議会と社会団体から批判の声があがった。例えば、アルカヤル議員(`Ali Al-kayal)は、イスマイル首相(Sherit Ismail)と供給相に緊急質問を提出した。同議員は報道陣に対し、この決定は一方的で不合理、横暴、治安にかかわり、エジプトの貧困層数百万を怒らせると主張した※9。値上げ反対の住民運動を率いるアルアスカラニ会長(Muhammad Al-Asqalani)は、パンは住民にとって重大関心事であるから、抗議デモはこのままでは済まないと政府に対して警鐘を鳴らしているのである、と述べた※10。

批判の声は、反政府勢力からもあがっている。それには、ムスリム同胞団とつながりを持つ者が含まれる。野党で前大統領候補サバヒ(Hamdeen Sabahi)は、フェイスブックに「人民を飢えさせる政権は長くはもたない」と書いた※11。ムルシ政権時代議会担当相であったマフソウブ(Muhammad Mahsoub)は、フェイスブックで現政権を批判、「これは飢餓の革命ではない。エジプトのような大きい国はおろか、パン屋さえ経営できない政権によって踏みにじめられた権利の革命である」と主張した※12。カマラ党は、ムバラク政権の経済政策の再導入反対を呼び、2011年1月25日革命の要求にこたえることが、唯一の危機打開の道である、と強調した※13。人民連合党は政府の政策を批判し、エジプトの経済危機で一番被害をこうむるのは貧乏人である、と主張した。人民連合は、首相の辞任を求め、貧乏人の苦しみに終止符をうち、パンの抗議がもたらす危険な連鎖反応からエジプトを救え、と叫びかけた※14。

抗議デモに対する反応がソーシャルメディアにも現れた。ツィッターユーザー達は、供給インティファダ≠フハッシュタグで活動を開始した。ムハジル≠ニいうユーザーは、「♯供給インティファダ人民は安全(保障)の成果と経済(分野)の失敗を区別したいのだ」と書いた※15。ムハマッド(Muhammad Ibn Al-Thawra)というユーザーは、「#供給インティファダはカイロに到達した…ウンムババ住民達がアルマタル道を封鎖した」と述べている※16。

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一方、半官紙Al-Ahramを含む新聞は、政府の決定を批判し、反動の恐れを警告した。パンの補助金問題に手をつけてはならないとし、撤回を要求している。次にその記事内容を紹介する。

供給相は補助金付パンの割当て削減を保留せよ―半官紙タワブ記者

半官紙Al-Ahramのコラムニストアブダル・タワブ(Ahmad Abd Al-Tawab)は、「パンの決定をひとまず保留せよ」と題し、次のように主張した。

「(供給相の)アリ・アルモーセリー博士は、ベテランの大臣で経験を積んだ政治家であり、供給問題の専門家でありながら、パン(補助金の)削減が(エジプトの)大衆にネガティブな反応を引き起すことを、認識しないのは、一体どうしてであろうか…決定が性急で近視眼的、補助制度の対象者である人民に打撃を与えるだけである。この決定は、腐敗(決定が狙い打ちにする対象者)に打撃を与えず、逆に大衆、店舗、パン焼き屋を直撃するだけである。思いもよらぬ程の打撃をうけるだろう。全く受入れ難い…供給相は、事態がこれ以上悪化しない内に、決定の保留を発表し、諸派と胸襟を開いた対話を開始すべきである…」※17。

パン問題に手を付けるな―Al-Masri Al-Yawm紙会長

Al-Masri Al-Yawmのアミン会長(Muhammad Amin)は、エジプトが経済危機に見舞われ、パンは住民がまだ手にしている最後のものであり、従ってこれを奪ってはならぬこと位、アルシシ大統領は知っている筈であるとし、次のように書いた。

「供給相は、パンは触れてはならぬ問題であることを知っており、首相は、たとい供給相が極めて有能であるとしても、本件を単独で扱わせることはできない、と知っている。そして大統領は、この二人よりも、住民のパンを取り上げることはできないと判って いる。パンだけが住民に残された唯一のものであることも、よく判っている…これは、関係者全員に対する警告のメッセージである…大臣が実施前に計画を大統領に提示したのは確かである。

このパン革命は、大カイロで勃発して広がっていったのではなく、地方から始まった。これが目新しい点である。これは政治的性格を帯びてはおらず、左翼や政党が主導しているわけではない…私は、供給相が気後れすることなく踏みとどまって火を消すと、確信している。

大統領と大臣は、パンが貧者の食物であることを知っており、我々が石油や砂糖、バター或いは若鶏の話をしているのではないことも、判っている…一日が終れば人民は食べるパンが欲しいのである…」※18。

飢えの怒りは警告―Al-Misriyyoun紙会長

独立系の新聞Al-Misriyyounの会長スルタン(Gamal Sultan)は、「飢餓革命前の最初の警報」と題する記事で、通りで抗議した住民達は、アルシシの支持基盤に属し、この抗議は、経済を救うためアルシシがこれまで着手していない政治革命を実行し、エジプト人民に自由を認めなければならぬことを、証明しているとし、次のように論じた。

「貧民のためのパンの割当が削減されて、昨日、一昨日と通りで発生した飢餓の怒りは、極めて明確なる苦難の警報である。政治団体に主導されたり操られたりしていない、自然発生的であるから尚更である…昨日一昨日通りで抗議した住民達で反大統領のスローガンを唱えて者のなかには、大統領の支持基盤の者がいた。彼が政権固めに頼っていた人達である。自由の欠如に怒るエリート層や中産階級とは、全然違う人達である。支持率が高いと主張してきたのも、この人達が存在するからである。アルシシによると、エジプト人民は、民主々義とか権限移譲よりも、より良き生活、保健ケア、教育そして栄養の方に関心がある。そして、それを保証するのが自分であるとも主張してきた。今日エジプト内外の人間は誰でも知っていることであるが、自分の飢えをみたし自分と子供達の生きる糧を欲しいだけの人達が通りで抗議しているのであり、これはアルシシの保証が破綻したこと示す―或いは又飢えが彼等を通りに押し出し、反シシを呼ばせているのである。

アルシシは、時代遅れのメンタリティを持つ軍人であるので、政治ないしは社会改革なしでも、経済成長をスパークできる≠ニ考えている。これがアルシシの問題である。これは全世界が既に棄てた幻想である。第三世界でまだ信じている支配者がいくらか存在するにすぎない。開けた世界では、健全且つ透明性のある政治風土、誠実且つ独立した監督機関、個人や党派の利益より公共を反映する公平な法制度、権力の平和的移行を保証する政治体制が必要であり、指導者は、不断に公共の監督をうけるのである…

エジプトで起きていることは、軍人が一番成功する率が高いから赫々たる軍歴を誇る指導者がエジプトには最適という神話を、ものの見事に粉砕していのである。貧しい住民達が、軍歴を誇る男の中の男に、抗議しているのだ。エジプトは、全く違うものを必要としている。この路上抗議がこれを物語っている」※19。


[1] Rassd.com, March 7, 2017.

[2] エジプトの経済危機に関しては次を参照:MEMRI Inquiry and Analysis No.1278, Egypt's Severe Economic Crisis Sparks Harsh Criticism Of Regime's Economic Policy, Calls To Topple Regime On November 11, November 10, 2016.

[3] Rassd.com, Al-Watan (Egypt), Al-Masri Al-Yawm (Egypt), Al-Yawm Al-Sabi' (Egypt), March 7, 2017.

[4] Al-Yawm Al-Sabi' (Egypt), March 7, 2017.

[5] Al-Misriyyoun (Egypt), March 7, 2017.

[6] Al-Quds Al-Arabi (London), March 9, 2017.

[7] Parlamany.com, March 8, 2017.

[8] Minister Al-Moselhy's official Facebook account, March 7, 2017; mubasher24.org, March 8, 2017.

[9] Rassd.com, March 7, 2017.

[10] Al-Masri Al-Yawm (Egypt), March 7, 2017.

[11] Facebook.com/Hamdeen.Egypt, March 7, 2017.

[12] Facebook.com/Mahsoob, March 7, 2017.

[13] Al-Quds Al-Arabi (London), March 9, 2017.

[14] Al-Quds Al-Arabi (London), March 9, 2017.

[15] Twitter.com/haithammorad3, March 7, 2017.

[16] Twitter.com/mhedewa, March 7, 2017.

[17] Al-Ahram (Egypt), March 9, 2017.

[18] Al-Masri Al-Yawm (Egypt), March 8, 2017.

[19] Al-Misriyyoun (Egypt), March 8, 2017.


 

 

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