メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 6854 Apr/5/2017

ヒズボラが対イスラエル軍事行動に出ればレバノンが一番打撃を受ける
―レバノン紙コラムニストの主張―

レバノンのコラムニストであるモカレド(Diana Moukalled)が、「ヒズボラはイスラエル、レバノンのどちらに脅威を与えているか」と題する記事を、サウジの英字紙Arab Newsに寄稿した。ヒズボラのナスララ書記長は、最近イスラエルに対する威嚇を強め、デイモナの原子炉を攻撃するとも言っているとし※1、ナスララが脅迫をエスカレートしている背景には、ヒズボラが抱える事情が二つある、と指摘した。第1、シリアでヒズボラは相当軍事的打撃をこうむっており、それを補償したいこと。第2、ヒズボラとイランのグローバルな立場が凋落しつつあり、それを挽回するため、反イスラエル行動をとって支援を得ようとしている。デイモナ周辺には沢山のイスラエル人、パレスチナ人が居住しており、原子炉攻撃でこの人達が犠牲になるとし、ナスララの主張は無責任極まりないと批判。更にイランは、冒険主義の舞台として何度もレバノンを利用してきたとし、最近の政治情勢からイランとヒズボラがレバノンを舞台に対イスラエル攻撃を仕掛ける可能性があると指摘。そうなれば被害をうけるのはレバノンであり、前回よりももっと大きい打撃をうけると主張した。次に紹介するのは、その記事内容である※2。


Diana Moukalled (image: twitter.com/dianamoukalled)

最近、ヒズボラのナスララ書記長が嘲笑と冷笑まじりでイスラエルに対する威嚇を強めている。デイモナの原子炉かアンモニアタンクか知らないが、そこを爆撃するとも言った。イスラエルはこの声明に反応した。イスラエルの複数のウェブサイトは、シリアにおける戦闘でヒズボラが支援と資金面 で困った立場にある、と指摘している。

これまでイスラエルは、ヒズボラの脅威と動きを深刻にうけとめ、注意深く対応してきた。しかし、この対応姿勢は変ったように見える。私は、イスラエルを賞賛するつもりはない。イスラエルは人種主義の占領国家である。侵略者としての危険性を過小評価するつもりもない。私が言いたいのは、ナスララが最近表明したことの結果がどうなるか、である。レバノン人、そしてデイモナ原子炉から数キロ圏内に住むパレスチナ人その他の人々がこうむる事態のことである。

イスラエルに対する軍事行動或いは戦闘行為が壊滅的打撃をもたらすことは、誰でも知っている。ヒズボラが真先に判っている筈である。11年前の戦争以来レバノン南部が静かなのは、ナスララが教訓を学んだからであろう。

原子炉を攻撃目標にするなどと脅迫をエスカレートさせるのは―付近には数千数万のパレスチナ人とイスラエルの民間人が居住しており、放射能によって多数の犠牲者がでる恐れがある―無責任どころの話ではない。支持基盤回復のための人気とり作戦の域を越えている。しかし、この空しいスローガンは、ナスララにとっては、今ほど必要なことはなかったというところであろう。戦闘態勢の向きを変えてイスラエル正面を活性化し、シリアでの損害を、こちらでとり返すということである。シリアをめぐる急速な政治情勢の変化と国際コンセンサスの形成に伴なって、いずれヒズボラはこの国から出て行くことになる。であるとするならば、戦闘正面を変えるのは理にかなっているということになる。その場合、イランがいろいろな形でこちらへかかわってくる。

目下の政治状況を現実的に見れば、今は決断の秋ではなく、アメリカの中東政策がどうなるのかを見極める段階であり、武力を誇示し交渉用のカードを集めるのが重点となる。イラン、そしてシリアにおけるイランの影響力に圧力をかけ続ければ、テヘランとヒズボラは圧力回避のため方向を転換し、イスラエルなどに向かって対決姿勢を強めるだろう。その場合、イランの新しい冒険主義の一番良い足場は、レバノンということになる。

しかし、状況は2006年の場合とは違う。ヒズボラがイスラエルに対して軍事行動をとれば、前回と違ってイスラエルはヒズボラとレバノンに圧倒的武力を以て反撃してくるだろう。その場合イスラエルは、拠点ではなくレバノン全土を攻撃対象にする。ミシェル・アウン大統領は、ヒズボラの武力がレバノン国軍の役割を補完すると言った。イスラエルがレバノン軍まで攻撃対象にする口実ができたわけである。

ヒズボラを攻撃する適当な状況は、いずれ醸成される。しかしイスラエルは、軍事行動をあわててとる必要はないのである。イスラエルは、シリアでヒズボラがこうむった打撃をモニターしている。兵力の損失、資金の涸渇、士気の低下があり、ヒズボラに対するアラブの敵意もみられる。イランが背後で糸を引くヒズボラの役割に鑑みて、2006年時のアラブの支援は期待できない。ヒズボラの威嚇が威嚇のままですまなくなれば、何処の誰よりもレバノンが一番傷つく。そしてこれまでの戦争や危機時よりも格段に大きい被害をうけるだろう。

1 2017年2月16日、Al-Mayadeen TVでナスララ書記長は、イスラエルに「ハイファからアンモニア施設をどこかへ移動させるだけでなく、デイモナの核施設を撤去しておけ」と警告し、「ミサイルが施設に命中すれば、施設と(シオニスト)存在体がどうなるか、連中には判っている」と言った。次を参照:

" MEMRI TV Clip No. 5896, "Hizbullah Secretary-General Nasrallah Threatens Missile Attack on Israeli Ammonia Facilities and Dimona Nuclear Plant," February 16, 2017.

※2 Arab News (Saudi Arabia), February 26, 2017.


 

 

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