メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 6938 May/24/2017

我々の中のIS的文化風土―キリスト教徒に対する排除と非寛容
―パレスチナ人指導者の警告―

パレスチナ解放民主戦線(DFLP)のメンバーでPLOの海外問題部長アブゴシュ(Nihad Abu Ghosh)が、2017年4月17日付パレスチナ紙Al-Hadathに、パレスチナ自治区(PA)に居住するキリスト教徒の惨状とその人口激減について報じた。アブゴシュによると、これは占領という事態に起因するだけでなく、パレスチナ社会に浸透しているイスラム国(IS)的文化風土に由来しているという。例えば、エルアクサのイスラム説教師達は、キリスト教徒に人頭税を課せとか、キリスト教の祝祭日にはキリスト教徒に挨拶するなと主張する。キリスト教徒に対するむごい仕打ちで教徒の流出はとまらず、さまざまな宗教が共存するというパレスチナ社会のイメージも崩れる。このように指摘するアブゴシュは、キリスト教徒保護を公けの問題としてとりあげ、解決策を講じなければならないと主張する。以下その記事内容である※1。


Nihad Abu Ghosh (image: Al-Hadath, Ramallah, April 17, 2017)

中東地域でキリスト教徒が直面している危機的状況について、時々その警告を耳にしている。イラクとシリアでキリスト教徒社会が潰滅的攻撃をうけ、エジプトでは度々教会が爆弾テロに見舞われているから、その警告は当然である※2。一連の事件に伴っているのが、共存を否定する論議、他者を異端として非難する態度、キリスト教徒を今尚ズィンミー扱いし、二級市民視する差別意識である※3。例外なくすべてのアラブ国家が、信仰、出身、人種或いはジェンダーの如何を問わず市民全員に平等の権利と義務を保障する市民社会をつくれなかった。

我々の隣人であるトルコでは、20世紀の10年代だけでキリスト教徒の割合は30%から1%以下に激減した。アルメニア人、シリア人そしてアッシリア人の虐殺、ギリシア人を含む民族浄化と住民移送等によって、減少したのである…。

イエス・キリスト生誕の地パレスチナではどうであろうか。この地にキリスト教徒絶滅の危機はないのであろうか。この問題に答えるとして、いつも民族融和とか共存といった口あたりのよい話が持出され、或いはかくかくしかじかのキリスト教徒知識人や芸術家、政治家がいるとして、キリスト教徒保護の有力な証拠としたり、キリスト教徒の激減を占領のせいにしたりする。パレスチナ(自治区)のキリスト教徒人口は、ナクバ(大災厄の意味、1948年のイスラエル独立)の前20%を占めていたが、1967年の占領後2%以下になってしまった。ちなみにイスラエルをみると、全人口の10%がアラブ系の住民(注、正確には20%)、キリスト教徒は2%を占める。

占領が、パレスチナ人、キリスト教徒、ムスリムに悲劇をもたらし流出要因になったのは間違いないが、文化的人口的環境 も流出につながっている。この傾向はムスリムよりキリスト教徒の方が強い。移住先で同質的社会に融合されるのである。例えば南米特にチリでは、パレスチナ人社会がいくつもあるが、圧倒的にキリスト教徒である。

警告すべき危機は本物であり、深刻である。それは何かというと、ISとその犯罪とかかわるだけでなく、IS的文化と、パレスチナ人キリスト教徒を排除する環境の存在、である。今日でも、アルアクサモスクの説教師達は、占領者や入植者はそっちのけにして、キリスト教徒にジズヤ(人頭税)をかける話をしたり、キリスト教の祝祭日にキリスト教徒に祝意を表明することを禁じるファトワをだした者もいる。或いは、役所と評議会に余りにも多くの地位が(キリスト教徒に)提供されているといった話をする者がいる。

キリスト教徒の惨憺たる状況は、我々が(つくりあげようと)願う寛容の文化、市民の権利と義務の原則を侵害するのみならず、パレスチナの民族アイデンティティを損なう。このアイデンティティは、シオニストの計画した単一の一神教と人種主義的社会とは違って、さまざまな宗教、人種を含む複合的パレスチナ社会を意味するものであった。我々のパレスチナのアイデンティティは、刺繍をしたあでやかなパレスチナの民族服と4色の旗に象徴されている。単色のIS旗やタリバンが女性に着せるチャドル(頭からつま先まで体を隠す黒のローブ)とは違うのである。

エルサレム旧市のアルメニア(キリスト教徒)地区をユダヤ人地区に併合するイスラエル・アメリカの計画に、故PA議長アラファトは激怒して、「私はヤシール・アラファティアン」と(アルメニア風の発音で)言った。彼は、パレスチナのアイデンティティの複合的イメージを重視し、すべての社会構成要素―ムスリム、キリスト教徒、サマリタン、非シオニストのユダヤ人―に、パレスチナの公的機関への登用の機会を与えた。この(キリスト教徒流出)問題は、キリスト教徒の傷口を癒し、歴史的なキリスト教徒の存在を守るために、最高レベルでのオープン且つ率直な検討が必要である…。

※1 2017年4月17日付Al-Hadath(ラマッラ)。

※2 最近エジプトで教会に対する爆弾テロが発生している。2016年12月11日、カイロのアバシヤ地区にあるコプト派教会のチャペルをターゲットにしたテロでは、25名死亡、49名の負傷者がでた、2017年12月12日付Al-Ahram(エジプト)。2017年4月8日には、タンタとアレキサンドリアの教会がISの爆弾テロで破壊された、2017年4月10日付Al-Hayat (ロンドン)。

※3 ムスリムの支配と保護下におかれる従属的非ムスリム社会のこと。


 

 

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