メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 7056 Aug/25/2017

IS(イスラム国)撲滅には他者 との共存学習を必要とする
―‘Al-Sharq Al-Awsat編集長の主張―

ロンドン発行アラブ紙Al-Sharq Al-Awsatは、「共存かそれともISか」と題する編集長ハルベル(Ghassan Charbel)の記事を、2017年8月7日付紙面で掲載した。その趣旨によると、IS(イスラム国)は、アラブ社会に外部から押しつけられたのではなく、アラブ社会の中に生じ、内部の分裂と紛争のために、成長し拡大することができた。よって、ISを永遠に葬り去るためには、町の通りや学校、メディアそしてモスクに横行する過激イデオロギーと対決する必要がある。特にアラブは、他者との共存法を学びとり、共生を受入れなければならない。国の内外そして世界で自分と違う考えをする人間を拒否してはならない。これが起きなかったら、四分五裂した社会は、ISのような組織が住みつくところとなる。次に紹介するのは、同紙英語版の本記事である※1。


Ghassan Charbel (image: Al-Sharq Al-Awsat, London)

…今日、地域はIS (イスラム国) に対する一連の勝利に湧いている。祝う権利はある。ISは血と泥の嵐であり、暗黒史の重い一章である。ISに捕らえられ或いは孤児になった人々の話は、悲惨に尽きる。

しかし、勝利に湧くより、もっと大切なのは、教訓に学ぶことである。

この恐るべき組織は、我々の社会に何処からか落ちてきたのではない。社会の中で生じ割れ目から侵入し、恨みにつき動かされる経験豊富な戦士によって支えられている。ISは、自分達が苦しんでいなかったら、国境を侵犯することはなく、国家の意志が四分五裂していなかったら、この地域に居を構えることもできなかった筈である。

ISとの戦いは困難なように見える。自爆兵、トンネル、仕掛け爆弾、そして洗脳されて自ら爆弾と化し引金を引く瞬間を待つ若者達。

それでも、戦場における対IS戦が重要であっても、戦場は総体的な戦いの一部にしかすぎない。本当の勝利は、ISの思想を克服し、組織を生みだし成長拡大させた環境を乗り越えることである。

町の通り、クラブ或いは学校の教科書、そしてメディアとモスクで、我々がISと対決しなければ、このテロ組織との戦いは中途半端に終り、危険は残る。

ISの戦闘員は、何処かに身を隠すことができる。一匹狼となって自爆する時を待つのである。

幅広い面での対決で一番重要なのは、共存の決断ができるかどうかである。テレビ映りのいい共存場面はフェイク、既に失敗している。問題の核心は、諸国内の人民そして諸国間の共存である。

我々は、世界と共存する決心をしなければならない。さまざまな信仰、人種、肌の色を受入れず、我と同じにならなければ殺すという思考を棄てなければならない。世界を屈服させ、我と同じような形に変えなければならぬとする信仰こそ、危険なのである。それは、人間をこの世界で時限爆弾に仕立てる最短距離である。我々が、他者が他者である権利を否定すれば、我々は制御できない衝突コースに入ってしまうのである。我とは違う人間を敵として扱い、或いは正道を踏みはずした人間とみなす時、越えられぬ壁が築かれ、ほかの国が到達した進歩の道を進むには協力が必要だが、これも閉ざしてしまう。犠牲多き経験を経て生き残った諸国は、違うことが己れを豊かにし、しっかり守らねばならぬ正しい道であることを、学びとっているのである。

解釈を許さず、単一の概念をベースとした人間像のみ存在が認められるとする考え方は、我々を壁の前に立たせ、破滅へ追いやってしまう。

地域外の人間との共存を決める前に、我々は、地域内の人間との共存を決めなければならない。違う意見は犯罪であり脅威であると考えることは、内戦へ向かう第一歩である。それは、アイデンティティの終焉であり、虐殺の始まりである。我々は、建物の中、村或いは都市の住民には、さまざまな人がおり、それぞれの考え方を持つことを認めなければならない。それぞれ平等の権利を持ち、単一の人間像をベースとせず、人種構成の比率などとは関係なく市民権をベースとする国の中で、安全安心感を抱く。これが人の生きる道である。

我々が共存しない限り、数万数十万の犠牲者をだし数百万の難民をつくりだしたこの地獄から抜け出る道はない。それを決断しなければ、戦って勝利しても、次の戦いが待っている…共存を本気で決断しなければ、四分五裂した社会は、ISやそれに類似する組織に、再浮上の機会を与える。

ISとの戦いにおける究極の勝利は、市民が権利と義務をもつ真の近代国家が建設されない限り、達成されない。他者と違う権利を認める国、機会の国、総合的な発展、他者の存在を認めるカリキュラム、オープン且つ責任あるメディア。このような国で市民権もあるというのが前提であり、他者を認めない思想では、そこにたどり着けない。

介入とクーデタが続き、他者排除と憎悪の政策が使われる限り、この地獄からの脱出路はない。随分時間がたったが、我々は何度も復讐心に燃えた空しい政策、報復を繰り返してきた。将来の見通しを閉ざし、国家、首都、大学を汚してしまった。我々はこの濁った水では最早泳げない…。

我々の問題は、ISの存在を以て始まったのではない。ISに対する軍事的勝利で、すべてが収まるわけでもない。開発に遅れをとり、時代のテストに失敗しているのが、本当の問題である。我々の問題は、未来行き列車の切符代を払いたくないところにある。

※1 Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)2017年8月7日付


 

 

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