メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 7228 Dec/19/2017

トランプ発表を梃にパレスチナの首都エルサレムを認めさせよ
―路上の暴力とは異なるパレスチナ人の主張―

アメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに対し、アラブ及びパレスチナ人達が一斉に非難攻撃を開始した。その動きと並行する形で、パレスチナ人のなかには、トランプ宣言の積極的側面を考える者もいる。パレスチナを国家として認めていない諸国が国家として認める機会になるのではないか。アメリカと国連がエルサレムをパレスチナの首都として認知するのではないか。アメリカの代りに国連が和平プロセスの後ろ盾になり、国際社会でアメリカとイスラエルを孤立させ、エルサレムとパレスチナを国際問題のトップにおく機会になった。要約すればこのような見解である。このパレスチナ人達は、アメリカ人のなかにもパレスチナの大義を支持する人達がいるから、十把ひとからげで反米を叫ぶのはやめよとか、ペンス副大統領のラマッラ訪問をキャンセルすべきではない、と主張する。その一方で彼等は、アメリカの国旗を焼き、アメリカに死を≠ニ斉唱するのはやめるが、住民の抗議は続ける一方で、アメリカ製品ボイコットと国際機関での外交活動に集中すべしという意見もある。

次に紹介するのは、この一連の記事内容である。

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エルサレムをイスラエルの首都と認める大統領特別命令書を示すトランプ大統領(image: Aljazeera.com, December 7, 2017)

ペンス訪問を無視するな―前PA閣僚ザイヤド

パレスチナ自治政府(PA)の前閣僚ザイヤド(Ziad Abu-Zayyad)は、次のように主張している。

「私はアッバス議長に、ペンス副大統領をラマッラに迎え、その後可及的速やかにワシントンへ行ってトランプ大統領に会うよう勧告する。エルサレムに関する発表の撤回を求めるのが目的ではない。どうせ撤回などしない。撤回交渉は政治的にナイーブというべきである。(アッバスのワシントン行きの目的は)トランプに同等の決定を要求するところにある。アラブ側(東)エルサレムに対するパレスチナ人の主権を認めさせ、バランスをとらせることである。更に外交プロセスを(再)機動し、国連にエルサレムを首都とするパレスチナ国家を承認させると共に、占領終結とパレスチナ独立国家の建国を保証させる。

トランプの決定は、これを我々が有利になるように、利用すべきである。町の通りで怒号をはりあげ罵声を浴びせ、扇動するだけでは無意味である。上記の目的を達成するうえで、ゆさぶりをかけ注意を喚起するという意味では、我々は住民の抗議を、ここ郷土で、アラブ世界、イスラム世界そして世界全体で続け、拡大していかなければならない。

一方、公的及び国際レベルでは、トランプの一方的宣言に引続き反対し、同時にアラブのエルサレムをパレスチナ国家の首都として認めるよう運動していく必要がある…。

世論と公式の立場には違いがある。前者は住民の気持が表明されている。後者は、外交ルールに従って抑制し、冷静でなければならない……住民は、通りに出て、抗議デモを行ない、自己の政府や外国或いは諸勢力の政策を非難する権利がある。これは表現の自由、言論の自由の一部である。(しかしながら)このような諸国や諸勢力は、通りで住民が何を言っても意に介さない。彼等が留意するのは、公式のチャンネルで公式の立場として伝えられるものだけである。

この数日、ペンス副大統領の当地域訪問をめぐって、アッバス議長の面会拒否や(ペンスの)ラマッラ訪問のキャンセルの可能性をめぐって、いろいろ議論がかわされている。その口火をきったのが、PAの幹部といわれている。ペンスは好ましくない人物(ペルソナ・ノングラタ)であるから、アッバスが面会をキャンセルすると言った由だが、本当にそう言ったとしても、それはPAの公式の立場を反映していない。トランプの宣言に対する住民の怒りを代弁しているだけである。トランプは(自分の宣言で)、ムスリムとキリスト教徒を含むアラブの心、世界中のムスリムの心と意識に宿るエルサレムへの思いを無視したのである。更にこの(発表)は、合法的な国際諸決議と矛盾してもいる。それには、国連安保理、国連総会決議が含まれる。エルサレムは占領都市であり、イスラエルが施行する法令は無効であるとしているのだ。1949年の第4次ジュネーブ協定は、エルサレムと占領下パレスチナ領に適用される。

トランプの決定に対する非難とその決定の危険な影響に鑑みて、ペンスの来訪とアッバス議長が面会すべき理由を考えて然るべきである……つまり、パレスチナ自治政府の意思決定者が公式の立場を表明する前に、トランプ宣言の有利点と不利点を精査し、トランプ宣言でイスラエルが何を得るのかではなく、我々が得たいものは何かを見定めたうえで、我々の立場を形成すべきである…。

トランプは、エルサレムをイスラエルの首都と認める、と確かに言った。その一方で彼は、イスラエルの主権下にある地域の境界は、交渉によって決定されなければならないとも言った。そして、エルサレムをイスラエルの首都と認める決定は、恒久的なとり決め―それにはエルサレムも含む―をめぐる交渉の結果に結びついていないとも言った。彼は又、ユダヤ人、ムスリムそしてキリスト教徒が礼拝する聖所として、それぞれ西壁、エルアクサ寺院、聖墳墓教会をあげ、聖所の現状維持が尊重されなければならない、と強調した。

エルアクサはムスリムに帰属するとの表明は、そこに対するユダヤ人の願望に終止符をうつ。同じように、イスラエルの主権下にある(エルサレムの)境界は交渉を通して決定されるとも言っている。つまり、エルサレムは、恒久的な取り決めに含まれる問題のひとつということである。つまり、トランプの話に新奇なものは何もない。パレスチナ側指導者を含む人々が、西エルサレムはイスラエルの首都で東エルサレムはパレスチナ人の首都と主張している。これとトランプの話が大幅にずれているわけではない。

ペンスとの面会やワシントンへ行ってトランプと会う話に反対するのは、市中のパレスチナ住民の怒りを静めることにはなろうが、パレスチナの大義に寄与することはなく、我方人民のためにもならない。それどころか、エルサレムそして我々にとって大きい打撃を与える恐れがある」。

トランプ発表はパレスチナの大義促進になり得る―前首相アドバイザーの意見

パレスチナ自治政府の前首相ファイヤド(SalamFayyad)のアドバイザーであったアル・ゴウル(Hilmi Al-Ghoul)は、パレスチナ紙Al-Hayat Al-Jadidaで、次のように主張した。

「2017年12月6日、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認める≠ニ宣言したことは、和平プロセスとパレスチナの民族的権益に打撃を与え、国際決議や法を侮辱し、正義と自由のはなはだしい侵害である。しかし同時に、それはパレスチナ人の抱える問題のためになる、重要なステップとなり得る。何故ならば、この問題にあらためて焦点があたるからであり、地元、地域、アラブそして国際社会が、更には住民だけでなく政界及び外交界が、見下げ果てたアメリカの決定にこぞって反対している。その反対姿勢がエルサレムをパレスチナ人の永遠の都市として認めることにつながるのである。いわば絶好の機会である。

以上指摘したことは、あらゆる分野とレベルにおける反応で明らかである。特に2017年12月9日の国連安保理の態度で明確である。そこでは、14(メンバー)国がトランプの無茶な決定に反対したのである。更に、アラブ・イスラム緊急首脳会議もパレスチナ国家の永遠の首都としての地位を承認したではないか。

トランプの決定は、(パレスチナ人の)民族の権利を抑圧するものであり、新しい段階、外交ゲームのルールの変更の土台となるだろう。それには、我々パレスチナ人側が、次の対応をする必要がある。

(a)和平プロセスに対するアメリカの支援に反対する。

(b) 和平プロセスに関係のある国際組織、そして国際刑事裁判所や国際司法裁判所、その他の国連機関などを後ろ盾とする。

(c) パレスチナ人の地位を高めるため多くの国連機関に加盟する。

トランプのエルサレム宣言をバルフォア宣言に例える人がいるが、これには違いがある。バルフォア宣言は、国際的反応をひき起さなかった。当時世界は帝国主義が渦まき、或はそれと協調していたからである。そして又、第一次世界大戦後…グローバルな力は、主要資本主義勢力の間で分散していた。従ってあの呪われた(バルフォア)決定は反応を引き起こさなかった。一方エルサレムに関するトランプの決定は、反対と非難に逢着し、世界と二つに分裂させた。一方にアメリカとイスラエル、もう一方は世界主要諸国である。

イギリス、カナダ及び全EUなど伝統的な親アメリカ、親イスラエル国を含め、全体が(トランプの)決定に反対している。つまり、パレスチナの大義特にエルサレム問題について、パレスチナ人にこそふさわしいとの認識を示しているのである。そして、トランプ、ネタニヤフそして彼等に追随する者はいずれもアラブ、地域そして国際外交の分野で槍玉にあがっている。これをパレスチナ側からみれば、新しい水平が開いたということで、その水平は拡大し、パレスチナ国家の承認へ向け、大きいうねりとなっていくだろう。イスラエルは相応の代償を払うことになる」※1。

路上の反米活動ではなく、アメリカ製品をボイコットせよ―全ナブルスワクフ総代

ナブルスのイスラム・ワクフの前総代アル・ダビ(Zuheir Al-Dab`i)は、次のように論じた。

「我々に怒りの日≠ヘ必要ない。我々に必要なのは、覚醒、認識、理解を深めるための(長期に及ぶ)工作である。情報を蒐集し、状況を分析評価したうえで、行動計画をたてなければならない。郷土と聖所のため自己を犠牲にするということでは足りない。効果的な運用原則に従って、体制を整えなければならない。高貴、誠実、信心だけでは、シオニストの体制に対応できないのである。部族の風習と信仰をベースにしている場合が然りである…。

我々のウンマ(イスラム共同体)と我が同胞に対し不当なことをアメリカが行う度に、我々は声明をだし、抗議しデモをする。それはそれで良いが、充分ではない。効果がないのである。アメリカが我々に不当行為を働く度に、我々はアメリカに死を≠ニ叫び、アメリカの国旗を焼く。実際の目的はエルサレム、アラブの郷土そしてムスリム諸国で我々の権利をかちとることだけなのであり、アメリカその他に死を及ぼすのは本意でない筈である。すべての人間が、尊厳、自由、正義、進歩そして和平を手にする権利がある筈である。

アメリカの国旗を焼くのは、我々のためにならず、不当なことに決着をつけることにもならない。我々を傷つけるだけである。アメリカ(の好戦主義者)は国旗を焼く行為を逆手にとって国民を動員し、我々の権利、我々の郷土と大義に打撃を与えるのである…。

我々はアメリカを初め世界中の侵略者に反対するが、人種主義と憎悪、占領に反対する良きアメリカ人は支持する。アメリカ人のなかには、ヘブロンの旧市、エルサレムそしてナブルスのヤナウン地区の我々の民を支援し、我々の子供達と地元農民、羊飼いの側につく者もいるのである。

我々は暴力反対を叫ばなければならない。暴力は相手の罠にはまるだけである。我々はアメリカ製品のボイコットによってパレスチナ全域、世界の被圧迫民、人種主義と占領の犠牲者を守れる。その力を持っているのだ。アメリカの煙草を吸わず、コカ・コーラを飲まず、ほかのアメリカ製品の購入をやめれば、静かに、怒声もあげず、人類の食料、薬品市場、子供のミルクを支配するアメリカの力に打撃を与えられる」※2。

暴力は避けなければならない―マハムード・ダーラン立法評議会メンバー

パレスチナ自治区の立法評議会メンバーであるダーラン(Mahmoud Dahlan)はアッバス議長によってファタハの組織から追放された人物。トランプの発表について、次のように主張する。

「発表は意図とは逆の効果を生んでしまった。何故ならば、このおかげで、パレスチナの大義が最高に注目されることになり、エルサレムを傷つけようとする行為は、パレスチナの若者達を―低迷と麻痺の状態から立ち直るきっかけを与えたのである。トランプの発表は、(パレスチナ)内部とディアスポラのパレスチナ人のインティファダに火をつけ、アラブの広範な支援をうけることになった。このような新しい現実には、政治、外交正面で賢明な行動が必要であり、占領者の罠に落ちないために、武器の使用をやめなければならない。敵は暴力のサイクルを再開しようと狙っているのである。アッバス議長は、占領下にある国家としてエルサレムを首都とするパレスチナ、を宣言すべきである」※3。

*1 Al-Hayat Al-Jadida (PA) December 11, 2017

*2 Al-Quds (Jerusalem) December 11, 2017

*3 Amad.ps December 12, 2017


 

 

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