メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 調査および分析シリーズ
中東報道研究機関




前のページ
前のページ
プリンターフレンドリー
プリンターフレンドリー


THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 476 Dec/3/2008

インドがパキスタン内で軍事行動をとれば、パキスタン軍と共闘する―タリバン、ラシュカレ・タイバ指導者言明―
トファイル・アフマド*

はじめに

 11/26ムンバイテロ攻撃の後、パキスタンではインド空軍の動きを懸念する空気が強まっている。アメリカがパキスタン・アフガニスタン国境域の隠れ家をミサイルで攻撃しているように、インド空軍が、パキスタン内の武装集団根拠地を空爆するのではないか、というのである。

 ウルドゥ語のパキスタン主流紙Roznama Janqは2008年12月2日付紙面で、インド空軍が非合法組織ラシュカレ・タイバ(Lashkar-e-Taiba)の本拠地ムリドケ(Muridke)を空爆する恐れがある、と報じた。ラホールに近いムリドゲでは、ラシュカレ・タイバの指導者サイード(Hafiz Muhammad Saeed)が、ダワ(Jamaatud Dawa)と称する新しい組織名を使って行動している。

 一方タリバンの指導者達は、目下のところアメリカのミサイル攻撃をなんとかかわしつつあるが、この数ヶ月パキスタンの治安部隊と血みどろの戦闘に足をとられ、立往生の状態にあり、ムンバイ襲撃を契機にパキスタン軍と停戦する手掛りをつかもうとしている。

タリバン指導者を“パキスタンの愛国者”と呼ぶパキスタン軍

 タリバンの停戦提案は、アメリカ主導の対テロ戦争に反対するパキスタン軍の対外強硬派将校達が、歓迎している。前述Roznama Janqは2008年12月1日付紙面で、数名のタリバン幹部が、インドによるパキスタン攻撃があれば、パキスタン軍を支援する意向を示した、と報じた。この支援提案に対して、パキスタン軍幹部達は、タリバン指導者達を、パキスタンの愛国者≠ニ呼んだ。

 同紙は「(タリバン側からの)停戦提案が受入れられる前向きな空気はある。パキスタン軍はその第一段階として報道陣を前にメスド(Baitullah Mehsud)とファズララ(Maulvi Fazlullah)の両名を含む武装集団指揮官達は愛国的パキスタン人≠ナあると、明言した」と報じた※2。

 メスドとファズララは、パキスタンにおけるタリバン運動を牛耳る人物である。更にメスドは、B・ブット前首相の暗殺計画にかかわった、と非難されたいわくつきの男である。

 同紙は「この二人の武装集団指揮官は…反パキスタンのテロリストとしてずっと非難されてきた。ところがムンバイ事件の結果突如としてテロリストから愛国者に格上げされた」と書いている。

自爆隊員500名が待機

 この数日、タリバンの指揮官やスポークスマンが何名もパキスタンのさまざまなメディアに接触し、インドからの攻撃があればパキスタン軍を支援するとの意向を語っている。2008年11月30日、南ワジリスタンのパキスタン部族地区を本拠地とするタリバンのナジル(Mullah Nazir)派スポークスマン、ワリ・ムハンマドは、インドがパキスタンを攻撃すれば、インド国内で自爆攻撃をかけると警告した。

 このムハンマドはシャヒーンという名でも知られているが、「我々は(パキスタン)政府と立場が違う。しかし、国の安全にかかわる問題なら話は別である。我々には、インドに投入できる自爆隊員が500人いる」と語っている※3。

 このタリバンのスポークスマンは、宗教上政治上の違いを乗りこえて大同団結し、パキスタンを守れと述べ、戦争になればタリバン戦士1万5000人が、パキスタン軍と共にインドと戦う、と語った。

タリバンは実効支配線の守り方なら心得ている―タリバン指導者の発言

 2008年12月1日、テレーケ・タリバン・パキスタン(Tehreek-e-Taliban Pakistan)の主任スポークスマンであるオマル(Maulvi Omar)も、インドに対して警告を発し、戦争になればタリバン戦士がパキスタン軍及び治安部隊と共闘して、インド軍と戦うと述べた。

 このスポークスマンは、ムンバイ襲撃事件後インドの脅威が強まっているとし、それはパキスタン軍や治安部隊を狙ったものではなく、ムスリム国家としてのパキスタンを敵視した行動である、と語った。

 更にこのスポークスマンは、タリバン戦士がパキスタン軍兵士と共に、カシミール地方の実効支配線の守りにつくこともあり得るとし、「タリバンはデュアランド線(1893年に設定されたアガニスタンと英領インドとの境界線)を、我々の手で守ってきたのである。実効支配線(カシミール地方のインド・パキスタン休戦ライン)の守り方なら心得ている」とも言っている※4。

 同じテレーケ・タリバン・パキスタンの第一副代表モハマド(Maulvi Faqir Mohammad)は、所在秘匿地からパシュート語紙Warzpanra Wahdatに電話し、インドがパキスタンを攻撃すれば、手勢を率いてパキスタンを守ると言った※5。

ムンバイ襲撃はインド情報部の陰謀―テレーケ・タリバン・パキスタン幹部の解釈

 モハマド第一副代表は、ムンバイのテロ攻撃はインド情報部の仕組んだものと非難し、このムンバイ攻撃は、パキスタンに汚名を着せるために仕組まれたものであり、タリバンは一切関与していないと語った。

パキスタンに戦闘支援を提示するカイバル居留地の武装集団

 パキスタンの部族地区カイバル居留地には、二つの武装集団が勢力を誇っている。ラシュカレ・イスラム(Lashkar-e-Islam)とアンサルル・イスラム(Ansarul Islam)である。二つの集団はいずれもパキスタン軍と共闘してインド軍と戦うと表明している。

 2008年11月30日、ラシュカレ・イスラムのスポークスマン、カーン(Misri Khan)は、インドからの攻撃をうければ、数千数万のラシュカレ・イスラム戦士が、パキスタンの敵にしかるべき反撃を加えると述べた。

 このスポークスマンは、「我々の先人達は身を挺してパキスタンの国境を守った。後に続くラシュカレ・イスラムは躊躇することなく身を犠牲として国家の安全を守る」とつけ加えている※6。

 カイバル居留地で第二の勢力を誇るアンサルル・イスラムも、戦士がパキスタン国境をインドから守るとしている。

 2008年12月1日、アンサルル・イスラムのスポークスマンアフリディ(Mubin Afridi)は、数千の戦士が、パキスタン政府の対インド戦開始命令をてぐすねひいて待っていると述べ、ほかの武装集団も小異を捨てて大同に就き、インドと戦うとつけ加えた※7。

ムスリム共同体を破壊する異教徒の残虐な策謀に結着をつける時―ダワ指導者言明

 ラシュカレ・タイバ指導者サイードの腹心でダワ(Jamaatud Dawa)のスポークスマンでもあるムジャヒド(Yahya Mujahid)は前記ウルドゥ語紙に対し、ダワ運営のイスラム神学校と施設をインドが空爆すれば、パキスタンの領土主権に対する侵犯として対応する、と言った※8。

 ダワの別の幹部マッキ(Hafiz Abdul Rahman Makki)も同種の警告を発している。パキスタンは、国家破壊を目的とする外部の陰謀を許さないという。カラチで開かれた集会でマッキは、パキスタンの首を締める外国勢力を非難し、「ムスリム共同体(Umma)は団結しなければならない。ムスリム共同体を破壊する異教徒共の残虐な策謀に決着をつける時が来た」と言明した※9。

 マッキはムスリム同胞に対し、戦闘能力がないからといってジハードから逃げてはならないと警告し、「敵と戦うには戦闘能力を身につける必要がある。しかし、(戦闘能力がないとの)口実でジハードから逃げるのは正しくない」と言った。

*トファイル・アフマドは、MEMRIのウルドゥ語・パシュート語メディアプロジェクトの責任者。

※1 2008年12月2日付Roznama Jang(パキスタン)

※2 2008年12月1日付同上

※3 2008年12月1日付Roznama Jasarat(パキスタン)

※4 2008年12月2日付同上

※5 2008年12月2日付Wrazpanra Wahdat(パキスタン)

※6 2008年12月1日付Roznama Express(パキスタン)

※7 2008年12月2日付Wrazpanra Wahdat

※8 2008年12月2日付Roznama Jang

※9 2008年12月1日付Roznama Express


 

 

すべての翻訳の著作権はメムリが所有する。
記事の引用の際は必ずメムリの名前を記載すること。

著作権に関する問い合わせはここをクリックして下さい。

ウェブサイト開発: WEBstationONE, ウェブホスティング: SecureHosts.
Copyright © 2001, 2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010, 2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 2016. All Rights Reserved.