メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 調査および分析シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

調査および分析シリーズ


 
Inquiry and Analysis Series No 529 Jul/1/2009

衰微するイランの抗議運動
A・サヴィヨン*

 イランの選挙から2週間すぎた現在、イラン政府は抗議運動の鎮圧に成功したようにみえる。本報告では、この運動が後退、衰微した理由を検討する。

1)体制側による暴力的鎮圧

抗議は大半が平和的なデモであったが、イランの体制側は苛烈な暴力手段で鎮圧にかかった。革命防衛隊とバシジ民兵隊は、なかには私服姿のものもいたが、棍棒やナイフを使い、或いは実弾射撃で抗議者を追い散らした。治安部隊は、市中のデモ隊に対し暴力手段による鎮圧をはかったほか、テヘランの学生寮を急襲したり、抗議デモ参加者、政治活動家、ジャーナリスト、知識人を次々と逮捕した。更に夜間アッラー・アクバル≠ニいう叫び声が発せられた家があれば、その家主を捕まえて処罰した。政府首脳は、デモ参加者を威嚇し、抗議運動に同情的なウェブサイトとメディアの発信を遮断した。更に、デモ参加者とその指導者を、イランの敵と内通する反イラン勢力ときめつけ、抗議運動反対のメディアキャンペーンを展開した。政治活動、党活動の許可は取り消され、特別法廷を設置して、抗議者を逮捕しどしどし起訴した。

2)抗議運動の指導者は政権打倒を意図しなかった―彼等の動きは、体制内の内輪もめ

抗議運動の指導者であるムサビ(Mir Hossein Mousavi)、カロウビ(Mehdi Karroubi)そしてハタミ(Mohammad Khatami)は、デモ参加者に平和的行動に徹せよと呼びかけ、目的達成のため政府と交渉する、と述べた。彼等のいう目的とは、選挙のやり直しか、すべての側に受入れられるアヤトラ委員会を設置して選挙結果を調べるかである。この指導者達は、一部抗議者の考えと違って、政権打倒に関心はなく、最高指導者ハメネイの打倒を求めているわけではない※1。

 ここではっきり指摘しておかなければならないが、抗議運動の背後にいるハタミとラフサンジャニは、ハメネイに楯つく先任アヤトラを味方につけることができなかった。ラフサンジャニは体制内で二番目の勢力を誇り、二つの重要組織(専門家会議と公益判別会議)の議長でもあるが、政権交代の運動を主導するなど一言も表明したことがない。ラフサンジャニは、最高指導者に対し露骨にいやな顔をするものの、当の最高指導者の決定にはっきりと楯ついたことがない。報道によると、体制内にあって、先任アヤトラを自己の陣営につけようとしたが、結局はハメネイの決定に挑戦しなかった。

3)国際支援の欠如

 このイラン危機時西側は非介入の立場をとった。

まとめ

 選挙後イランで起きたのは、国民各層の怒りの爆発であった。そこにはひとつの共通分母がある。即ち不正選挙に対する怒りである。国民大衆は抗議運動をひっぱる人物を求めたが、その様な指導者は見つからなかった。

 体制側は力があり、抗議を残酷に鎮圧した。宗教指導部のリーダーシップ発揮もなく、世界は沈黙した。つまり、抗議運動は推進力を失い、2週間にして崩壊し始めた。しかしながら、もっと有力な抗議運動がおきる可能性は残されている。それは必要な要素が揃う時である。つまり、一般的性格を持つ抗議者の存在、体制側を揺るがすほどの重量感のあるイデオロギー上の衝突、運動を先導し、犠牲をいとわぬ宗教指導部のリーダーシップ、そして国際支援である。

 イランにおける今回の抗議運動は、イラン周辺諸国のスンニ派アラブ社会にも、影響を及ぼすであろう。不正選挙など珍しくない地域である。

 ハメネイの権威に従う保守体制内には二つの潮流がある。体制側が抗議鎮圧に成功した今、各界のエリート達は両者の関係修復に忙しい※2。ラフサンジャニは抗議が発生して2週間後に初めて、自己の立場を明らかにした。つまり、ハメネイに対する忠誠を宣言し(悠久の慈愛≠ニ表現した)、ハメネイとラフサンジャニの主張に沿って、この抗議運動の背後に外国勢力がいると言った※3。

*A・サヴィヨンはイランメディァのプロジェクト長。

※1指導者の立場は、例えばムサビ支持派の議員アリハーニ(Ghodratollah Alikhani)が表明、最近開催の議会で感情を込め「我々は全員が革命の息子達である」と叫んだ。

※2 2009年6月9日付MEMRI No. 522「イランの選挙 第U部」を参照。

http://www2.memri.org/bin/articles.cgi?Page=countries&Area=iran&ID=IA52209

2009年6月19日付の金曜説教で、体制にとって指導者全員が重要であることを強調し、以来体制側の各界エリート達と組織は、不満を抱く大統領候補の慰撫に勤め、危機回避のための解決策を提示している。この努力の一環を担う人々が、アルダビリ(Mousavi Ardabili)ソブハニ(Sobhani)アモリ(Javadi Amoli)といったコムのアヤトラ達や、議会内に紛争調停委員会を設置したラリジャニ国会議長、護憲会議のメンバー達である。

 2009年6月19 日付ハメネイ演説はMEMRI No.2413「イランの最高指導者ハメネイの金曜日説教―どのような選挙でも勝者と敗者がいる」を参照。

※3 2009年6月28日付ILNA(イラン) 2009年6月27日付Mehr(イラン)

http://www.youtube.com/watch?v=Dfiv361ycpQ


 

 

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