メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
中東報道研究機関




前のページ
前のページ
プリンターフレンドリー
プリンターフレンドリー

フォーマットで購読


THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 1207 Jul/19/2006

イスラエル国境の武力紛争とイラン(4)―イラン、レバノン、シリアの反応

次に紹介するのは、シリーズ「イスラエル国境の武力紛争とイラン」の4回目である※1。

G8サミットは、7月16日の会議で中東の危機を主な議題として話合った。サミット開催国のロシアは、核問題でイランを支持する主要国で、制裁に反対していたが「核問題でイランに圧力をかけすぎると政治的行き詰まりに逢着する」と従来の立場を繰返し表明した※2。

イラン外務省スポークスマンのアセフィ(Hamid-Reza Asefi)は「我々はサミットの話合いとその結果を待っている。G8には二つの選択肢がある。賢明で妥当な勧告と常軌を逸した道だ」と述べた※3。

一方、核問題を担当するイラン国家安全保障最高会議書記ラリジャニ(Ali Larijani)は最高指導者ハメネイ師の特使として、2006年7月15日サウジを突然訪問した。「レバノン及びパレスチナ領における事態を協議」するためであるが、大統領アフマディネジャドのアブダッラー国王宛親書を持参した※4。サウジがヒズボラとイランを批判するアラブ勢力のリード役を果している事実は、指摘しておくべきだろう。

イラン、レバノン及びシリアの報道機関は、2006年7月14日から16日にかけてイスラエルとヒズボラ間の紛争に関する論評、声明を掲載した。以下その概要である。

1.イラン側の反応

レバノン攻撃はイスラエル世界に対する侵略行為―イラン大統領

前号に続き、アフマディネジャドは色々発言している。例えば、

「支持者共がこの体制支持を見直さず、或いは打倒しなければ、怒りは巨大な爆発をおこす。影響をうけるのはこの地域に限定されない」とか※5、「イスラエルのレバノン攻撃はイスラエム世界に対する侵略行為である」とも言っている※6。

イランは全世界の米権益をターゲットにする―イラン情報相言明

7月13日のイラン情報相エズヘイ(Gholam-Hossein Mohseni-Ezhei)の発言。

「アメリカ、いやどの国でもそうであるが、イランを攻撃すれば、イランの権益、政治、経済及び社会生活を危険にさらす行為とうけとめる…イラン攻撃を意図する国は、途方もない代償を払うことを知らねばならぬ。アメリカは、このようなイラン攻撃をやる勇気はない。攻撃すればアメリカの重大権益がすべて危うくなるからだ。我々の対米戦争は、地域をアメリカ国内に限定しない。我々は、全世界の米権益をターゲットにする」※7。

イスラム世界の軍事行動でシオニストはその罪を悔いる―イラン国防相

イランの国防相ナジャル(Mustafa Najar)は、次のように言っている。

「イスラエルの犯す罪の責任はアメリカにある。これがイスラム世界の対米認識だ…アメリカはこの地域を戦争と紛争の発火点にしてしまった。イスラエルの安全を守り石油利権を全部手にするため、この挙にでているのだ。

レバノン砲爆撃を続け、それにもしシリアを攻撃するようであれば、シオニスト体制は大きな被害をこうむり、悔やむことになる…勝利は抑圧された人民が、核兵器で武装した者に対して素手で立向かい、宗教と郷土を守る人々の手に帰す…イスラム世界が本気になれば、シオニストはその犯した罪を悔やむようになる」※8。

アメリカの理論家は第二次大戦(ママ)勃発と判断

マシァド市で開催されたバシジ幹部会議に出席したイラン国家安全保障最高会議副書記ファジル(Gholam Reza Rahmani-Fazil)は、戦争になったとして、次のように主張した。

「イランの核開発で西側はイランに挑戦中だ。アメリカの理論家は既に第二次大戦(ママ)が勃発したと主張している。この種戦争で決定的役割を果すのはイランである」※9。

イスラエルを支援すれば全世界が危なくなる―テヘラン・タイムズ

イラン外務省系のテヘラン・タイムズは、最高指導者ハメネイ師と強く結びついているが、「イスラエルはこの地域を混淆の世界へ突き落とそうとしている」と題する社説で、超大国に警告を発し、次のように論じた。

「イスラエルの継続的支援は全世界を危険にさらす。世界の安全は悪化し、世界経済も大きなダメージをうける。

レバノン攻撃は、既に石油価格の高騰をもたらした。1バレル78ドルと前例のない高値である。G8の参加諸国は世界をハルマゲドンへ突き落とそうとするイスラエルの暴挙をやめさせよ。

イスラエルは抵抗運動(ヒズボラ)との長期戦に耐えられない。アメリカですら、米海兵隊に対するヒズボラの自爆攻撃で、1980年代初めベイルートから尻尾を巻いて撤退せざるを得なくなったのだ」※10。

反イスラエル闘争の新しい始まり―ハメネイ師側近

保守系日刊紙カイハン編集長で最高指導者ハメネイ師の側近シャリアトマダリ(Hossein Shariatmadari)は、2006年7月13日同紙で、次のように書いた。

「ヒズボラの攻撃は、反イスラエル闘争の新しい始まりである。これによって地域のバランス・オブ・パワーは変り、イスラム世界が優勢になる…エルサレムを占領している者共は近代兵器を持ってはいるが、人口も少ない小さな態勢である。これから攻撃を続ければ、この小さな体制はまもなく殲滅される」※11。

革命防衛隊司令官サファヴィ(Yahya Rahim Safavi)は、「アメリカは、イラク、アフガニスタンにおける失敗を糊塗するため、そして又、中東の民主化キャンペーンの名のもとに、今回の攻撃を仕掛けている。アメリカが背後にいる」と非難した※12。

革命防衛隊が支援するヒズボラの戦力―イランの軍事筋

革命防衛隊首脳に近いイランの軍事筋が、ロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatに、ヒズボラに対する訓練、武器援助等を明らかにした。以下その内容である。

「まず第一に、革命防衛隊はヒズボラ・ミサイル隊をつくった。1985年のことである。ベッカー盆地のウベイダラー(Sheikh `Ubeidallah)軍基地で訓練をおこなった。革命防衛隊から約2,000人が来て、この基地にいた。ここが彼等の司令部だった。(1989年)レバノン内戦が終り、タイフ協定が結ばれると、大半はレバノンを去ったが、残った少数精鋭の部隊が150名から250名ほどのヒズボラ(戦士)を訓練した…。

第二が、特別訓練コースだ。イランで実施され、これまで3000名を越えるヒズボラが訓練を受けた。ゲリラ戦、ミサイル操作法、火砲の扱い方、無人機の操作方法、凧(ハング・グライダー)の使い方、海上戦の要点、高速艇の操縦法、通常戦闘といった課程で訓練される。

第三が、パイロットの養成訓練で、この3年間で50名が養成された。

第四はロケット基地の設定で、革命防衛隊はこれまでイスラエル国境沿いに20ヶ所つくった。移動発射装置、つまり中型トラック搭載のミサイルランチャーも供給している。ヒズボラは1992年から2005年までに、ミサイル及びロケットを約11500発、短射程及び中射程砲400門、アレシュ、ヌーリ及びハディッド型ロケットの供給をうけた。

昨年ヒズボラは333ミリ弾頭付きの大型ミサイルウカブ、そして大量の肩撃ち式対空ミサイルSAM7を貰い、中国製ミサイルのコピー兵器C802ミサイルを貰った。そのうち2発が一昨日イスラエル艦艇の攻撃に使われた。

ヒズボラは最新式の地対地ミサイルを4種類所持している。即ち、

1  有効射程100kmのファジル ミサイル

2 有効射程90―110kmのイラン130 ミサイル

3 有効射程150kmのシャヒン ミサイル

4 有効射程150kmの335ミリ ロケット

この軍事筋は、「レバノンには、訓練教官、専門家及び技師が合計70名、イラン革命防衛隊情報隊(Faylaq Quds)60名がいる※13。ヒズボラ・ミサイル隊の支援、指導部指導の任にあたっている。ほかに革命防衛隊秘密隊もいる。将校20名の編成で、最新装置を使ってイスラエル軍部隊の動きを追い、イスラエル国内のターゲット選択をやっている。

ヒズボラは、保有兵器を全部投入したわけではない。今後数日、イスラエルのレバノン攻撃が続けば、ヒズボラは世界を震撼させる兵器を使用する。イスラエルの中心部が打撃を受けるだろう」※14。

2.レバノン側の反応

レバノン首相とイラン外相、イランの核問題で話合い

イランの情報筋によると、7月初旬レバノンのシニオラ首相(Fuad Al-Siniora)とイランのモッタキ外相(Manucher Mottaki)が会談し、イランの支援するヒズボラの活動、イランの核問題について話し合った。イラン側報道によると、シニオラは「国内問題に対するイランの干渉」に反対すると述べ、核問題については「イランが核能力を持たねばならぬという意見には賛成できない」と言明した。シニオラがイランの大統領アフマディネジャドに会うため近くテヘランを訪れるという報道もある※15。

我々は戦いたい、開戦する 近く恐ろしいことが起きる―ヒズボラ書記長言明

7月14日、ナスララ書記長は電話談話で次のように語った。

「現在進行中の戦闘は現代史上いや人類史上最も気高い戦いである。国際社会に一言などというが、他の多くの者と違って、私は国際社会なるものの存在を信じたことはないから、そのようなものに一言だっていうつもりはない。

今日展開中の事象は、捕虜問題に対するリアクションではなく、あの連中と決着をつけるための行為である…つまり、レバノンとレバノン人民を相手に全面戦争を仕掛けているシオニストとの戦い、である。連中は、2000年5月25日に起きたことに対して(南レバノンからの撤収をさす)報復、復讐をやっているのだ。

レバノン国民に対しては、二つの選択肢があると言いたい。要求に全面的に屈して、イスラエルの支配下に入るか、毅然として戦うか。1996年の怒りの葡萄作戦或いは1993年のアカウンタビリティ作戦のいずれも、我々にとって最初は大変厳しかった。しかし今日、状況は全く変っている。

シオニストの新政権や新指導部は馬鹿で無知だ。状況の本当の意味が判っていない。戦争をやりたいのだろう。受けて立とうじゃないか。全面戦争だ。ハイファを越えたところを叩く。1982年以前、2000年以前とは状況が変っているのだ。

アラブの指導者達は我々を冒険主義者と呼ぶ。そう呼びたければそう呼べ。我々は1982年以来冒険主義者だ。連中や世界は我々を気違いと呼ぶ。しかし、正常なのは我々の方であることを、我々は証明している。

誓って言うが、驚くべきことがこれから始まる。ベイルートの沖合いで、我々の家やインフラ或いは人間を攻撃していたイスラエルの艦艇が炎上した。シオニスト兵数十名諸共沈没するだろう。見てくれ。これが始まりだ」※16。

レバノンのシニオラ首相即時全面停戦を呼びかけ

2006年7月16日、シニオラ首相は即時全面停戦を呼びかけ、南レバノンの国連軍と協力して、政府の支配権をレバノン領全域に広げたいとの希望を表明した※17。

レバノンの独立宣言にシリアは戦争で回答―ドルーズ指導者ジュムブラット

ジュムブラットはアル・アラビアTVのインタビューで次のように言った。

「現在レバノンで起きているのは、シリアとイランの闘争、イスラエルとイランの闘争である。(イラン人がレバノンで戦っているという話について)イランはアメリカに言っている。“お前達が湾岸で戦い、我々の核施設を破壊したいのなら、我々はお前達の国とイスラエルを攻撃し、勿論レバノンでも戦う”とね。

3月14日(2005年)、レバノンで革命が起きた。シリアの保護領から抜けて独立し、シリアとは外交関係を樹立しようと宣言したのだ。我々はシャバア(農場)の境界線策定を主張した。回答は戦争だった。(二国間に)境界はない、外交関係もノー。これがシリアの返事だった。反抗すれば我々の回答はレバノンの破壊だ、と言っているのだ」※18。

欧米枢軸とシリア・イラン枢軸の紛争―キリスト教民兵隊LF指揮官ギアギア

「現在レバノンで起きているのは、(イスラエルに収監中のレバノン人)囚人問題その他こまごました問題をはるかに越えた事態なのである…欧米枢軸とシリア・イラン枢軸の対立、紛争が根底にあり、ここでそれが表面化しているのである」※19。

レバノンが国家意思を持つまで混乱が続く―レバノン国会議員

ムスタクバル派のレバノン国会議員イド(Walid ‘Ido)の発言

「この戦争は我々が決心するまで終らない。つまり、レバノンが自国のカードを全部取り返すまでは混乱が続くということだ。他のアラブ国家と同じように、戦争と平和を決めるのはレバノンという意志と決心を持つまでは、ということである」※20。

3.シリア側の反応

イスラエルの攻撃があれば抑制せず報復―シリア情報相

2006年7月16日、シリアの情報相ビラル(Mohsen Bilal)は「イスラエルがシリアを攻撃すれば、シリアは時間を限定せず、あらゆる手段を投入し、全面的に反撃する」と述べた※21。

シリア半官紙の反応

半官紙の社説は、アラブ諸国の反応を、イスラエルの攻撃に沈黙し間接的に支持する特有の行動習性、と批判した。以下2紙の論調である。

半官紙Al-Thawra

「いくつかのアラブ国家が敗北主義の文化を広めているが、アラブ人民は抵抗と犠牲の精神をしっかり持っている。アラブ人民は大きさを知っているが、指導者よりずっと勇敢である。今こそ抵抗運動と連帯し行動する時である」※22。

半官紙Teshreen 

「イスラエルはアメリカの祝福をうけ、アラブ諸国からは実にけしからぬ恥ずべき沈黙を得て、中東の地図を塗り替えようとしている。手始めがレバノンである…(アラブの)沈黙は、人民の生命と名誉を守らず、抵抗運動を背後から刺す共同謀議である。犯罪行為は続き、この地は燃えている。連帯の意思表示を示すのは今をおいてない」※23。

※1 このシリーズの1〜3はインターネットサイトMEMRI日本語版を参照。

※2 プーチンの発言  2006年7月14日付IRNA(イラン)

※3 2006年7月16日付IRNA

 7月16日イランはG8に核問題で穏当な姿勢をとるように求めた。イラン外務省スポークスマンのアセフィ(Hamid-Reza Asefi)は定例記者会見で「G8が穏当な姿勢を示せば、イラン・イスラム共和国は如何なる協議にも応じる」と述べている。

※4 2006年7月16日付Tehran Times

※5 同日付IRNA

※6 7月14日付同上

※7 2006年7月16日付IRNA

http://www.irna.ir/fa/news/view/line-2/8504259863110433.htm

※8 同上

http://www.irna.ir/fa/news/view/line-2/8504258298120402.htm

※9 2006年7月15日同上

※10 同日付Tehran Times

※11 2006年7月16日付Kayhan(イラン)

 http://www.kayhannews.ir/850425/2.htm#other200

※12 同日付Iran Daily

※13 ファイラク・クードス(Faylaq Quds)はイラクで行動中の革命防衛隊所属の特殊部隊

※14 2006年7月16日付Al-Sharq Al-Awsat (ロンドン)

※15 2006年7月3日付Aftab News Agency

http://www.aftabnews.ir/vdcirzat1yav5.htm/

※16 2006年7月16日付Al-Mustaqbal(レバノン)

※17 同上

※18 同日付Lebanese News Agency

※19 2006年7月15日付Al-Mustaqbal

※20 2006年7月16日付同上紙

※21 同日付Syrian News Agency

※22 同日付Al-Thawra(シリア)

※23 2006年7月15日付Teshreen (シリア)

  


 

 

すべての翻訳の著作権はメムリが所有する。
記事の引用の際は必ずメムリの名前を記載すること。

著作権に関する問い合わせはここをクリックして下さい。

ウェブサイト開発: WEBstationONE, ウェブホスティング: SecureHosts.
Copyright © 2001, 2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010, 2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 2016. All Rights Reserved.