メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 1249 Aug/19/2006

シリアとイランはレバノン戦争に直接介入―非難をつよめるアラブの報道

イスラエルとヒズボラの戦争は、アラブ世界の亀裂を鮮明にした。ヒズボラの支持諸国とサウジ、エジプトを初めとする反対諸国との間に、深い溝がある。それはアラブのメディアに反映し、ヒズボラ支持記事、激しい非難と批判記事が交差する。違いは明確である。

ヒズボラ非難のひとつが、この組織はレバノン国民の権益を代表せず、シリアとイランの走狗となり、アラブ全体の権益を危うくしているとする意見。イランの核開発問題、レバノンのハリリ(Rafiq Al-Hariri)前首相暗殺に関する調査結果から世界の目を引離すため、イランとシリアが危機をつくりだした。多くの記事がこのように主張する。イランが内部工作でアラブ諸国の破綻を目論んでいるとする記事もある。アラブの武装民兵隊を教唆煽動してアラブ諸政権に対して反乱を起させているというのである。

シリアとレバノンのヒズボラ支持国は、この組織がシリアとイランの下働きという主張に反対する。中東の地図を引き直そうと目論む欧米、そしてその下働きをするのがイスラエル、とヒズボラ支持国は唱える。 以下アラブメディアに掲載された記事である。

T. ヒズボラはイランとシリアの使い走り

*イスラエル兵の拉致はシリアとイランが事前に計画

 レバノンのコラムニストフセイニ(Huda Al-Husseini)は、ロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatで、次のように論評した。

「この2ヶ国(シリア、イラン)は、自分達の抱える厄介な問題を隠蔽したいのだ。双方ともそれぞれ手下を持っている。例えばハマス、ヒズボラである。シリアは、(レバノンの前)首相ハリリ暗殺に関する調査がもたらす重大な結果を避けるため、そして又孤立状態を破るため、一蓮託生の友を見つけて、(この地域を)混乱につき落したいのだ。一方のイランは、(核開発に関する)欧米の提案に答えたくない事情がある…。

 イランは、ウラン濃縮停止を先のばしにするため、核開発責任者ラリジャニ(Ali Larijani)をヨーロッパに派遣した。そして、問題が国連安保理にまわされると聞いて、イスラエル兵2名の拉致を実行させた…。ラリジャニは、世界の目をイランから引離すため、地域に危機的状況をつくりだせとテヘランから指示され、(ヨーロッパからの帰途)不意打ち的に急遽ダマスカスを訪れ、シリアの副大統領シャル(Farouq Al-Shar’)と協議した。ラリジャニは対イスラエル戦の必要性を説き、シリア側は、占領がレバノン、パレスチナにおける抵抗活動を正当化すると述べ…レバノンの破綻という犠牲を伴う抵抗、を主張する。一方のイランは全ムスリムの名においた闘争を口にしている。

 かくしてレバノンは、ヒズボラ、シリア、イランの人質になり、イスラム自体はイランの野望の人質となったのである。外部勢力に支援された国内の武装組織は政府と無関係に動き、この連中の冒険主義のつけをいつも払わされるのが、レバノンである」※1。

*戦争のタイミングがイランの関与を示唆―核問題が安保理に廻された時に拉致

 カイロのイスラム・民主々義研究アラブセンター所長アリ(Abd Al-Rahim ‘Ali)はエジプト半官紙Al-Ahramで、次のように論じた。

「ヒズボラがイランの教唆にこたえ、そしてイラン以外の地域勢力による煽動にのった時、つり合いのとれない相手と戦争を始めることになるのは承知していた。そしてその戦争のツケは全部レバノン国民だけが支払わされることも…。(イランは)核開発問題がすぐに安保理へまわされることを知ると、アメリカに対する圧力を強める手段として、イラクと共に、レバノンを利用することに決めたのである。問題は、レバノン国民が自分達の関わらない戦争のため、破壊の犠牲になる必要があるのかである。南レバノンにおけるイスラエルの侵攻時や(イスラエルと)ヒズボラ間の戦闘時に、イスラエル兵2名が拉致されたのであれば、この脱線行為も正当化できたかも知れない。しかし拉致作戦のタイミングは全くかみ合っていない。イランの関与をはっきり示唆している」※2。

 レバノンのコラムニストマタール(Fuad Matar)は、前出ロンドン発行アラビア語紙で、次のように論評している。

「ヒズボラは、タイミングから明らかなように、イランの国益に奉仕するために作戦を実行し、(アラブを)困った立場においこんだ。安保理常任理事国5ヶ国とドイツがイランの核問題を安保理にまわした同じ日に、拉致させたのである」※3。

*他人の利益に奉仕して被害責任を我々に押しつけるな

 前出ロンドン発行アラビア語紙の編集長フメイド(Tareq Al-Humeid)は、他人の犠牲になるのは御免とし、次のように書いた。

「或るグループが、他人の利益に奉仕するため、この地域を火の海にしようと決めたため、我々(アラブの)力と資源が破壊される。実に考えられないことが起きているのである…イスラエルと戦いたい者は、勝手にそうせよ。但し、自分の行動による結果責任は自分で負え。ナスララは究極のアラブ側指導者を自称し、「誰の助けも求めていない」と豪語する。(ハマスの政治局長)マシァル(Khaled Mash’al)だってそうだ。この二人は、自分でつくりだした状況の責任をとり、破壊の責任を他の人々に押しつけるな。自分だけ苦しんでくれ」※4。

*アラブ世界で次に展開するのは、イラン(枢軸)対アメリカ(枢軸)戦争

 エジプトの半官紙Al-Gumhuriyya編集長イブラヒム(Muhammad ‘Ali Ibrahim)は中東の近未来闘争観を、次のように描いている。

「我々は二つの計画に直面している。いずれ劣らず危険な計画である。第一はイスラエル・アメリカの計画で、アラブ諸国を外部から、軍事手段か経済制裁で破壊しようとする。第二がイランの計画で、レバノンのヒズボラとパレスチナのハマスを使用し、イラクを併呑して、アラブ諸国を内部から破壊しようとする。目的は達成されたようだ…この後イランは、アラブ世界全体をヒズボラのような武装民兵隊に変える意図である。

 アラブ世界で展開する次なる闘争が、二つの枢軸或いは陣営―イラン枢軸とアメリカ枢軸―の戦いである。レバノンは、一番目の戦場になったようだ。この二つの枢軸は自分が前面にでて、或いは自分の手を汚さぬために手下や代理人を使って、戦争をやる。この一連の戦争によって、運動と政府の間の亀裂が深まっていく。即ち、ムスリム同胞団、ハマス、ヒズボラといった運動とアラブ諸政府との亀裂である。

 この間のデモで、ムスリム同胞団の最高指導者アケフ(Sheikh Mahdi ‘Akef)がイスラエルに対するジハードを呼びかけた。これはイラン式のジハードであり、その狙いは内部からエジプト、サウジ、ヨルダンを内部から破壊することにある。レバノンのように民兵隊をつくりあげ、その暗躍で国内は目茶苦茶となる…」※5。

*アラブ諸国に対する支配権の確立がイランの野望

 エジプトのコラムニストラーマン(Hazem ‘Abd Al-Rahman)は前出Al-Ahramで、次のように主張した。

「口が酸っぱくなる程言っているが、イランの願望は東のアラブ諸国に支配権を確立することにある。そのためヒズボラをトロイの馬として使っているのである。その組織は、指導者、活動家、支持者の命を(犠牲にして)捧げているが、将来はレバノンの国民と富を(犠牲にして)捧げることになる。得をするのはイランである。そして、イランの大統領アフマディネジャドはこのような含みを持たせながら、イスラエル無き新しい中東について、激越な演説をくり返すのである」※6。

*ヒズボラを使って国際地位を確立―イラン・シリア枢軸の狙い

 パレスチナ人自治区発行紙Al-Ayyamで、コラムニストのアジュラミ(Ashraf Al-Ajrami)は、イランとシリアの狙いを、次のように論じた。

 「助演級のヒズボラとハマスが目下主役を演じているが、その背後にあるのがダマスカス・テヘラン枢軸。この地域に潰滅的打撃を与えるつもりだ。これは、パレスチナとレバノンで既に実行されている。パレスチナ人とレバノン人は、アメリカと敵対するテヘラン、ダマスカスの人質にされ、この枢軸の利益に奉仕させられている。この枢軸は国際的地位を強めたいと願っており、パレスチナとレバノンがそのための道具に使われているのだ…」※7。

*アラブ諸国はヒズボラを武装解除すべきだった

 サウジ日刊紙Al-Watanの前編集者ハシュクジ(Jamal Hashukji)は、ヒズボラの行動にノーというサウジの態度を勇気ある姿勢≠ニしながらも、アラブの政策を次のように批判した。

 「アラブ諸国は(戦争になる前に)ヒズボラの武装解除をすべきだった。もう手遅れである。立上りが遅かったのはサウジアラビアだけではない。ほかのアラブ諸国も然りである。ヒズボラの特異な地位が長年顕著であったのに、アラブの誰かが決着をつけてくれるだろうと、手をこまぬいて何もしなかった。アメリカも目を覚ますのが遅すぎた。和平プロセスを無視したため、現在の危機を助長させたのである…。

 レバノンの危機を予見するためには、預言者や霊能者になる必要はなかった…最近の紛争エスカレートを煽りたいのはヒズボラである。レバノンのさまざまな政治勢力はイスラエルとアメリカが要求する前から、ヒズボラの武装解除を要求していた。

 かくしてヒズボラは、2人の(イスラエル)兵を拉致し、この地域を火の海とし、今やひとかどの軍事勢力になってしまった。イランは、核開発問題から世界の目をそらすため、これを利用する。そしてシリアは、レバノンに対する支配権を喪失したため、怒り狂っており、(レバノンの前)首相ハリリ暗殺の調査から世界の目をそらそうと、これを利用する…。

 レバノンの政治家のなかには、勇敢にもヒズボラの武装解除を提案した。レバノンが解放された以上、抵抗の必要は最早なしと主張したのである。しかし(ヒズボラは)、シャブア農場をイスラエルが占領している限り解放は完了せずと言い張って、(武装を)正当化した…シリアはこの口実に手を貸し、国としての資料提出をこばんでいる。つまり、農場の帰属を意図的にあいまいにしているのである。シリア領と宣言すれば、農場は被占領地ゴランの一部となる。レバノンが解放すべき土地ではないことになる。レバノンは全領土の主権が回復されたと正式に宣言する。ヒズボラは礼を尽した尊厳あふれる武器返納式で武装を解除され、レバノン国軍がそのメンバーの一部と武器全部を編入する。そしてこの党(ヒズボラ)は本来の政治活動に専念する。南(レバノン)のシーア派は、社会的地位の低いことをいつも嘆いているが、ヒズボラはそのシーア派の地位向上に貢献する。レバノンはこのような過程を踏めた筈である。

 農場がシリアのものかどうか。我々はシリアにこの問題をはっきりさせるようにせまるべきであった。しかしこれをせず過ちを犯したのである。クリアーしていれば農場を口実にはできず、(全体の問題)がイラン、シリア、レバノンの各種利益代表組織の間の話合いで、解決できたのであろう」※8。

*ハマスとヒズボラはシリアとイランの利益代表

 次はクウェート紙Arab TimesとAl-Siyassaの編集長アル・ジャララー(Ahmad Al-Jarallah)が、Arab Timesに書いた論評。

 「ハマスとヒズボラは自分の国の利益は忘れて、自分の国でイランとシリアの利益を代表する組織になりさがっている。自分の行為が自国に与える打撃には全く頓着せずシリアとイランの利益のために走りまわっているのだ…。

 ハマスとヒズボラはイスラエル兵を拉致するにあたって同じ理由をあげた。そこから我々は彼等の問題を垣間見ることができる。それはアメリカと紛争状態にあるシリアとイランの抱える問題に類似する」※9。

U. シリアの反応―イスラエルはイスラムと戦う欧米の代理人

 シリアは、ヒズボラがシリア、イランの手先であることを否定し、イスラエルこそ中東の地図を引き直そうとしている欧米の手先、と主張する。レバノンの大統領ラフゥド(Emili Lahoud)はシリアの立場を支持し、フォックスニューズのインタビューで「ヒズボラはレバノンの組織であり、レバノンの主権のために行動し…その戦士はレバノン国民であり、その要求はレバノンの要求であり、シリアやイランの要求ではない」と言った※10。

*レバノンの戦いは反欧米のアラブの独立戦争

 シリアの国外居住者担当相シャバン(Buthayna Sha’ban)は前出ロンドン発行アラビア語紙で、次のように主張した。

 「中東の戦争は代理人が戦っている。しかしヒズボラは、シリアとイランのため戦ったように主張する者がいるが、決してそうではない。イスラエルこそ、英米を初めとする西側のため、レバノンを戦場化して、アラブ、イスラムと戦っているのである…。

 示しあわせたように欧米諸国が一斉にレバノン在住民を脱出させたのは、有力な証拠である。ワシントン、ロンドン、パリは軍艦を送り、カナダ、オーストラリアその他の国は、脱出のスピードアップのため船を借りあげてまで実行した。イスラエルに犯罪行為、抵抗潰しのゴーサインを出してからそうやったのである…。

 つまり、レバノンの戦争はレバノンの独立戦争にとどまらない。それは大西洋から湾岸まで全アラブ大衆の独立戦争なのだ。欧米勢力はイスラエルに、対アラブ、対イスラム戦争の実行を命じた。大衆は、自分の土地で尊厳を以て生きる権利があることをその欧米勢力に証明するため、イスラエルのテロリスト的犯罪を証明するため、超大国の支持をうけてもアラブ大衆の怒りを押さえられぬことを証明するために、立上ったのだ…。

 ライス(国務長官)の唱える新しい中東′v画では、アラブは何の名誉尊厳、権利も持たない。そんなものを受入れられるか…この政治工作の目的は、アラブの存在に終止符を打つことである。アラブを難民化し、追放し或いは2級市民にすることだ。今回の戦争はアラブの生存を賭けた戦いである」※11。

*これは新しい帝国主義戦争だ

 シリアの半官紙Teshreenは、アメリカ政府が対レバノン戦争を主導し、イスラエルはその指示の実行役とする論を展開し、次のように主張した。

 「開戦13日目の今日、戦争の性格がいよいよ鮮明になった。アメリカはイスラエルの侵略のパートナーであるだけではない。指示者なのだ。イスラエルはその実行役である…。

 レバノンとムスリムをターゲットにするこの新帝国主義戦争で、新帝国主義者共に国連決議と人権宣言の尊重意志がないことが明らかになった。新しい中東≠つくるため、アラブはこまかに分断される。(イスラエルの大臣)シモン・ペレスがこれを表明し、アメリカがイスラエルにその第一段階の実行を指示した。我々が自問すべきは、ムスリムが沈没する前に目覚めて、自分の名誉と尊厳を守るために戦うかどうかである…」※12。

*イラク敗戦をレバノンで挽回―アメリカのもくろみ

 シリアコラムニスト ボーザ(Muhammad ‘Ali Boza)は半官紙Al-Thawraで次のように主張した。

 「レバノンをターゲットにし、その容貌を変え、地図の引き直しをはかっているのは、アメリカのネオコン。無謀且つ馬鹿気た行動の第2弾というところである。勿論、この地域を屈服せしめて支配下に入れようとするイスラエルが、道連れである。中東のあちこちを動きまわって破壊戦を主導するのはブッシュ政権。その実行のメカニズムを提供するのがオルメルト政権。イラクでの敗北をカバーアップし、レバノンに対する盲目的増悪をむきだしにして炎と死の輪をここまで拡大しているのである…」※13。

 同じAl-Thawraでコラムニストのアリ(’Adnan ‘Ali)は次のようにアメリカを非難した。

 「アメリカの国務省は、新しい中東の誕生について、繰返し声明をだしている。それ自体、対レバノン戦争を目論んだ者の意図が奈辺にあるかを、物語る。既存体制を破壊し、アメリカとイスラエルの好みに合った新しい状況をでっちあげるべく、(この戦争を)好機として利用しているのである…アメリカは早い段階で、新しい中東なるものを唱え始めた。レバノンとヒズボラの死体の山の上に築きたいのだ。そのため、さまざまな勢力に役割を分担させた。不幸なことにアラブのなかに役割を演じている者がいる。アメリカ・イスラエルの計画に反対も抵抗もしないおとなしい中東づくりに加担しているのである…」※14。

*ハリリ暗殺の背後勢力はイスラエルとアメリカ…戦争が証明

 この半官紙には、前レバノン首相ハラリの暗殺を米イのせいにする論も掲載された。曰く…

 「この(レバノン)戦争で、ハリリ首相の背後にいる勢力はイスラエルとアメリカであることが益々はっきりしてきた。アメリカは国連決議1559を押しつけようとして失敗した。暗殺はこの行為の流れにある。この決議とハリリ暗殺で一番得するのがイスラエルである。今回の侵攻は、このような背景で始まった…」※15。

※1 2006年7月15日付Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)

※2 2006年7月18日付Al-Ahram(エジプト)

※3 2006年7月15日付Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)

※4 同上

※5 2006年7月27日付Al-Gumhuriyya(エジプト)

※6 2006年8月6日付Al-Ahram(エジプト)

※7 2006年7月14日付Al-Ayyam(PA)

※8 2006年7月18日付Al-Watan(サウジ)

※9 2006年7月15日付Arab times(クウェート)

http://www.arabtimesonline.com/arabtimes/opinion/view.asp?msgID=1242

※10 2006年8月3日付Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)

※11 2006年7月24日付同上

※12 2006年7月25日付Teshreen(シリア)

※13 2006年7月27日付Al-Thawra(シリア)

※14 同上


 

 

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