メムリ(MEMRI) - 中東報道研究機関 緊急報告シリーズ
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THE MIDDLE EAST MEDIA RESEARCH INSTITUTE

緊急報告シリーズ


 
Special Dispatch Series No 1266 Aug/28/2006

シーア派は誰にも宣戦布告の権限を与えていない―シーア派社会の内部告発

ティレ及びジャバル・アーメル地区のムフティであるアル・アミン師(Sayyed ‘Ali Al-Amin)はレバノン紙Al-Naharのインタビューで、南部を含む国家の治安維持責任は一組織ではなく政府にあるから、レバノン政府はその責任をとり、南レバノンに国軍を展開せよ、と要求した。ヒズボラの武装解除を求める人々に対して、これを反逆者ときめつけて非難する者がいるが、アル・アミン師はこの非難を強く批判し、「国家に対する忠誠で、(レバノンの)特定社会が他にまさるなどということは絶対にない」と主張し、「レバノンのシーア派社会がその名において誰かに宣戦布告の権限を与えたことはない」とし、「むしろ逆である。シーア派社会は戦争に反対し、レバノンのほかの社会集団と同じように国家に忠誠を誓っている」と言明した。南部における抵抗支援は、国家に対する忠誠心の代用にはならない。南部を守る気持はどの社会にもある、とも主張した。

以下、そのインタビュー内容である。

本来なら戦争の結果責任はレバノン国が負わなければならない

記者

レバノンの33日間戦争をどう考えていますか。

アル・アミン師

まさに狂気の沙汰としか言いようのない戦争だった。イスラエルはレバノンを集団罪に問い、集団処罰を加えた…この戦争でイスラエルは国際法から逸脱した。いつもこうだ。建国以来、この手口を使っている…。

レバノンは国家、国民共にこの戦争に関わりを持たない…。国と国民が、望みもしないのに強要されたのである。戦争が勃発した瞬間から、誰もが即時停戦を求めた。しかしイスラエルは攻撃を際限もなく続けた。

今回の戦争、いやイスラエルとのどの戦争もそうであるが、どの分野でも(レバノンに)準備にないことをさらけだしてしまった。戦争を予期し或いは計画する者にとって、そのような準備が必要である。最低限の準備があれば、大きな被害はさけられたであろう。つまり、戦争は不可避、戦争しなければならぬと考えた場合、戦争によって生じる結果責任は、レバノンが負わなければならない。

これは、解放戦争でも人民抵抗でもない

しかし、開戦に至った経緯、開戦の仕方、使用武器のタイプからみて、これが解放戦争や人民抵抗であるとは、とても思えない。これは、複数の国とその軍が関与した全面戦争である。あれは、アラブの全体戦略の一環であり、レバノンはそれに組込まれた歯車のひとつである。レバノンに何に準備、何の心構えもなかったばかりに、高い代償を支払うはめになったのである。

レバノン国民としての統合、政府の国家権力掌握が、問題解決の基礎

記者

いつまでも続く行詰まり状態から抜け出すために、何か解決法はありますか。

アル・アミン師

解決の基礎になるのは、レバノン国民としての統合である。それは各社会、国民各層における連帯として顕現され、政府(を構成するさまざまな成分の)協調で具体化されるものである。国民の統合がなければ袋小路から出られない。

レバノン政府が提示した(解決のための)要点は、各層各派が合意したもので、以前にかわされた諸合意をベースにしている。以前にかわされた諸合意を履行していれば、今日のような状況にはならなかっただろう。

この合意要点は、もともとは、イスラエルの攻撃に発する対外問題を解決するために、まとめられたのであるが、国内の政治危機を解決する糸口になる。

しかしそのためには、各派すべてが国家という枠に制約され、憲法上、制度上政治上の機構に戻ることが、前提になる。国家権力を政府が掌握し、それを行使することによって、すべてのレバノン国民が安全、安定を保証される。すべての国民に公平であり、その国民が忠誠を誓い、防衛しようとする国が存在し、ひとつにまとまって始めて、以上のことが可能になる。

各派ばらばらに自己の社会とその権益を守ろうとしたために、今日の状況をきたしたのである。レバノンの経験は、このようなやり方が失敗することを証明している。すべての者が例外なく帰属する国家。これに代るものはない。

防衛は一組織ではなく国家の責任

記者

武装解除反対、武装抵抗支持派が一方にあり、武力は国家だけのものと主張する派がもう一方にあります。両者は争っています。あなたの立場はどうでしょうか。

アル・アミン師

国家がその役割を本当に果たす時、国家主権の行使、防衛はすべて国家の責任と権限である…そして国民が特定の団体や集団にその権限を委譲することはない。また国民は、国民としての義務と権利を有し、全体を代表する国家にその保証を求める。そういうことだ。

武装解除は反逆ではない

記者

(ヒズボラの精神的指導者)ファドララー師(Muhammad Hussein Fadhlallah)は、抵抗組織の武装解除の話は最大の反逆と言いました。これについてどう思われますか。

アル・アミン師

誰がどう言ったからこうだ、などというのは受入れられない。誰もが国としての統合力を強め、意見の違いを克服して大同団結しようと一生懸命になっている時に、このような話をもちだすのは奇異である。レバノン国民は全員が同じ壕に居るのであり、特定派閥だけが特に国家に対する忠誠心があついわけではない…

武装解除問題は、民族対話のテーブルで(既に)討議され、国家建設の過程における真のパートナー達によって…検討されるべく、提示されている…危機時に全員が連帯したのに、反逆だなどと非難する権利があるのだろうか。

武装解除について合意に達したとしよう。その武器は勿論敵に引渡されるのではない。逆である。武器の所有者を含むすべての者が成員である国家に、引渡されるのである。これが反逆といえようか。反逆というのなら、それに関心のある者(ヒズボラ)を初めとする人々が、何故対話のテーブルについたのか?

現段階で我々は、一層の客観性を必要とする。不安をかきたてるような誇張、出して然るべき問題の提示を妨げる言動は、よそうではないか…私の意見では、どのような問題提示も可である。それが国家としての姿、将来にかかわるものであれば、尚更である…(さまざまな共同体が)共存する社会では、反逆とか裏切りという非難は、辞書からなくすべきである。互いにこんなことを言いあっていたら、何もならない。

一国一軍の体制が必要―国軍の南部展開は政府の責任

記者

国軍の南部展開と任務について、どうお考えですか。

アル・アミン師

レバノン全土における国軍展開は、間違いなく全国民に支持され、歓迎される…タイフ協定以来、歴代政府の責務であった筈だ。ところが歴代の大統領が、国軍の展開と国家権力の全土行使に反対する。こんなことをやっているのは、世界でもレバノンだけである…。

レバノン国軍の任務は大きく多岐にわたる。第一の任務は、イスラエルの攻撃から国土を守り、それと同時に国家権力を全土に行きわたらせることである。南レバノンを含む全土に国軍が存在することは国家の基本であり、国家防衛上必要不可欠である。それは国家に対する帰属意識をつよめ、一国一軍で成り立つ体制を強化することにもなる。

南部における抵抗支援は国家に対する忠誠の代用にはならない

記者

ヒズボラがシーア派社会を独占し、国を困難な戦争にひきずりこんだ、とお考えですか。

アル・アミン師

ヒズボラがシーア派社会に戦争の了解をとったわけではない。南部から大きな人口移動があったのは、南部住民が戦争に反対していることを物語る。シーア派社会が、特定集団に戦争布告の権限を与えたことはない。シーア派社会を含むどの派も望まぬ戦争へ引きずりこんでもよい、と認めたことはない。南部で起きたことは、シーア派社会の意志を代表せず、シーア派社会の責任としてやったのではない。レバノン国家が何年も放置したために生じた真空が利用されたのである…国家として地域とその住民を守るべき責務を放棄した結果、である。

記者

シーア派社会は、ヒズボラと国家に対して二重の忠誠心を持っているのですか。

アル・アミン師

レバノン国家に忠実である点に関して、レバノンのシーア派はほかの国民と同じである。その歴史、過去と現在は、国に対する忠誠心と犠牲心を証明している…一方、南部における抵抗支援は、国家に対する忠誠心の代用にならぬ…レバノン国家に対する忠誠心に関して、南部で世論調査をやれば、ほかの地域の調査結果と同じだろう。つまり、レバノンの郷土、国家に対する忠誠心は、地域によって大差はないだろう。

レバノンのシーア派は、ほかとは違う特異な忠誠の枠組を持たない。単一国家であり、国家が全土に国家主権を行使しなければならない、と考えている筈である。


 

 

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